株式会社クレアクロス代表取締役。大阪市西区で賃貸・売買・収益・管理まで幅広く不動産の相談を受ける。肩書きより「自分の家族に勧められるか」を判断のものさしにしている。
- 入居申込と賃貸借契約は別物で、契約が成立する地点がどこにあるのか
- 契約前の申込金・預り金の返還が、宅建業法47条の2でどう扱われているか
- 審査中・重要事項説明の前後・署名後で、戻るお金と戻らないお金が変わること
- 預り証で確認しておきたい項目と、返還を拒まれたときの相談先
- 大阪市西区(靭本町・新町・南堀江・京町堀・阿波座)で申込みが急がされやすい場面
「申込はしたのですが、もっと条件のいい部屋が見つかってしまいました。今からキャンセルしたら、払ったお金は返ってきますか」。大阪市西区で賃貸のご相談を受けていると、季節を問わずいただくご質問です。人気の住戸は内見したその日に申込みが入ることもあり、「とりあえず押さえておきたい」と思うのは自然な感覚だと思います。ただ、申込と契約はまったく別のもので、どの地点にいるかによって、お金の扱いも、言い出すときの重さも変わります。この記事では、申込から鍵の引渡しまでの流れを分解し、どこまでなら戻るのか、どこから負担が生じるのかを、西区の現場目線で順に整理します。
「申込」と「契約」は、どこで線が引かれるのか
賃貸の流れは、入居申込、入居審査、重要事項説明、契約書の締結、契約金の支払い、鍵の引渡しという順に進みます。相談の現場で誤解が多いのは、このうち「審査に通った時点で契約になる」と受け取られている点です。入居申込書は「この条件で借りたい」という意思表示であり、審査はその申込みに対して貸主側が可否を判断する手続きです。審査に通った段階でも、まだ契約そのものは結ばれていないのが一般的な取扱いです。
ひとつの目安になるのが、重要事項説明です。宅地建物取引業者は、賃貸借契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして重要事項説明書を交付し説明させなければならないと定められています(宅建業法35条)。つまり重要事項説明は、契約の前に置かれている手続きです。これを受ける前のあなたは、まだ条件を確認している途中の段階にいる、と考えて差し支えありません。
ですから、契約書に署名する前であれば、申込を撤回することはできます。もっとも、法律上できることと、周囲に迷惑がかからないことは別の話です。申込が入っている間、貸主さんは他の募集を止めていることがありますし、管理会社は審査や契約書の準備を進めています。キャンセルを決めたなら、電話だけで終わらせず、メールなど記録に残る方法で、できるだけ早く伝える。これが最も誠実で、結果としてご自身を守る動き方になります。なお、契約直前の一方的な撤回で貸主に具体的な損害が生じたようなケースでは、例外的に責任を問われる可能性までゼロとは言えません。迷いがあるなら早めに、が鉄則です。
契約前の申込金・預り金は、返してもらえる
申込のときに「申込金」「預り金」「申込証拠金」といった名目で、1万円から家賃1か月分程度を預けることがあります。部屋を押さえる意思を示すためのお金で、契約に進めば契約金の一部に充当されるのが通常です。
この預り金について、宅建業法47条の2第3項および同法施行規則16条の12は、宅地建物取引業者が、申込の撤回を行った相手方に対して、すでに受領した預り金の返還を拒むことを禁じています。つまり「キャンセル料として差し引きます」「申込金は返金できない決まりです」という説明は、契約が成立していない段階であれば通りません。ここは借りる側が知っておくと、ずいぶん気持ちが軽くなる部分です。
実務として気をつけたいのは、預けるときの一手間です。必ず預り証を受け取り、名目・金額・返還の条件が書かれているかを確認してください。名目が「礼金の一部」「契約金の内金」などに置き換わっていると、話がややこしくなります。また、保証会社の保証料や鍵交換費用を申込段階で先に支払うよう求められた場合は、それが預り金なのか、役務の対価として既に発生している費用なのかを、その場で確認しておくことをおすすめします。万一、返還を拒まれたときは、その会社に免許を出している行政庁(大阪府知事免許であれば大阪府の宅地建物取引業の相談窓口)に相談できます。
キャンセルを決めたら、この順番で動く
審査中なのか、審査は通って契約日の調整に入っているのか、重要事項説明を受けたのか、契約書に署名したのか。この四つのどこにいるかで、話の重さがまるで変わります。判断に迷うときは、手元の書類を見てください。受け取っているのが入居申込書の控えと預り証だけなら、まだ契約前です。重要事項説明書と賃貸借契約書に署名した控えがあるなら、すでに契約が成立しています。
電話で一報を入れるのは構いませんが、それだけで終わらせないでください。「本日お電話した件です。○○マンション○号室の入居申込みを撤回します。預り金○円の返還をお願いします」と、物件名・部屋番号・日付を入れて一文送っておく。メールでも、不動産会社の問い合わせフォームでも構いません。言った言わないを避けられますし、返還の話もそこから動きます。
返還は振込になることが多いので、口座情報の伝達と預り証の返却方法を最初の連絡でまとめて確認しておくと、やり取りが一往復で済みます。「いつ頃の返金になりますか」と時期を聞いておくのも大切です。現金で預けた場合は、預り証の原本をどう扱うか(返却か、受領時に引き換えか)も決めておきましょう。
「とりあえず契約して、合わなければ解約すればいい」は、思っているより費用がかかります。迷いが残っているうちに、正直に担当者へ伝えてください。言いにくい話ほど、早いほど全員の損が小さくなります。私たちの現場でも、春から社会人になる方から「親と相談したら別の部屋のほうがいいと言われて」とご連絡をいただいたことがありました。まだ審査中でしたので、すぐ管理会社と貸主さんにお伝えし、お預かりしていた申込金は全額そのままお返ししています。
どの段階かで、戻るお金と戻らないお金はこう変わる
同じ「キャンセル」でも、どこで止めたかによって扱いが変わります。契約前は撤回、契約後は解約です。言葉が変わるだけでなく、負担の性質そのものが変わります。
| 確認項目 | 申込〜審査中 | 審査通過〜重説前 | 契約書に署名した後 |
|---|---|---|---|
| 扱われ方 | 申込の撤回 | 申込の撤回 | 契約の解約 |
| 申込金・預り金 | 返還されるのがルール | 返還されるのがルール | 契約金に充当済みで戻らない場合がある |
| 礼金・仲介手数料 | まだ発生しない | 原則まだ発生しない | 戻らないことがある |
| 賃料の負担 | なし | なし | 解約予告期間に応じて生じる |
| 先に確認する書類 | 預り証の名目と金額 | 契約予定日と重説の日程 | 解約条項と短期解約違約金の特約 |
署名後の負担が重くなるのは、契約が動き出しているからです。入居前であっても、契約書の解約予告期間(たとえば1か月前)に応じた賃料のほか、礼金・仲介手数料・保証会社の保証料などが戻らないことがあります。フリーレントや礼金ゼロの募集には短期解約違約金の特約が置かれていることもあり、入居していない期間についても請求の根拠になり得ます。契約書を受け取ったら、署名の前に解約条項と特約条項の二か所を開く。この習慣があるだけで、後の選択肢がずいぶん広がります。
大阪市西区で、申込みが急がされやすい場面
西区は街ごとに募集の動き方が違うので、「とりあえず申込」が起きやすい場面も変わります。阿波座・本町寄りのエリアは複数路線が使える利便性から単身向けの供給が厚く、条件の良い住戸は内見当日に申込が重なります。先に申し込んだ人から審査に進む取扱いが一般的なため、その場で決断を迫られやすいのがこの一帯です。だからこそ、申込書に署名する前に「申込金はいくらで、キャンセルしたら返りますか」と一言確認しておく価値があります。
靭本町・京町堀は管理体制の整ったファミリー向けマンションが多く、法人契約や社宅利用も見られます。会社の規程と物件側の条件を突き合わせる必要があるぶん、審査から契約まで日数がかかりがちです。その待ち時間に別の物件が気になって揺れる、というご相談はこのエリアで少なくありません。南堀江・新町はデザイン性の高い小規模物件が中心で、オーナー自主管理の住戸もあり、申込金の扱いが会社ごとに差が出やすい印象です。預り証の様式が簡素なときほど、名目と金額をご自身で書き留めておくことをおすすめします。
貸主さま、管理をされている方にも申し上げたいことがあります。申込金を返さない運用は、宅建業法上できないだけでなく、口コミや次の募集に跳ね返ります。むしろ「契約前ならいつでも撤回できます」と先に伝えておいたほうが、申込の質が上がり、審査の空振りが減ります。私たちが募集をお預かりする際は、申込の受付時に預り金の性質と返還の条件を口頭でも説明することを標準の手順にしています。手間のようでいて、結局いちばん早く決まる道でした。
よくある質問(FAQ)
A. 重要事項説明を受けて契約書に署名する前であれば、申込の撤回はできます。審査の通過は、貸主側が入居を了承したという段階で、契約の成立とは別です。ただし貸主さんは他の募集を止めている可能性がありますので、決めた日のうちに、記録の残る方法で伝えてください。
A. 契約が成立していない段階での預り金については、宅地建物取引業者が返還を拒むことを宅建業法47条の2第3項と施行規則16条の12が禁じています。預り証を手元に用意し、書面やメールで返還を求めてください。それでも応じてもらえない場合は、免許を出している行政庁(大阪府知事免許なら大阪府の宅地建物取引業の相談窓口)に相談する方法があります。
A. 契約書に署名・押印(電子契約なら電子署名)した後であれば、入居前でも「解約」の扱いになります。解約予告期間に応じた賃料や、礼金・仲介手数料・保証料が戻らないことがあり、短期解約違約金の特約が付いていれば、その適用も確認が必要です。まずは契約書の解約条項と特約条項を手元に用意し、管理会社に精算の内訳を出してもらってください。金額の妥当性を争う段階になると弁護士の領域になります。
株式会社クレアクロスは大阪市西区で賃貸・売買・収益・管理をワンストップで扱う不動産会社です。お部屋の申込みや契約前のご不安はもちろん、入居後の設備トラブル、退去の段取り、住み替えに伴う売却査定、収益物件の募集条件の見直しまで、まずはお気軽にご相談ください。