株式会社クレアクロス代表取締役。大阪市西区で賃貸・売買・収益・管理まで幅広く不動産の相談を受ける。肩書きより「自分の家族に勧められるか」を判断のものさしにしている。
- エアコンや給湯器が壊れたとき、修理費を負担するのは誰かという原則(民法606条)
- 2020年4月の改正で、家賃が「当然に」減額される仕組みに変わったこと(民法611条)
- 「設備」と「残置物」の違いが、修繕義務の有無を大きく分けること
- 減額が認められるかどうかを左右する、記録の残し方と連絡の順番
- 大阪市西区(靭本町・新町・南堀江・京町堀・阿波座)の建物事情とFAQ
「真夏にエアコンが止まってしまって、管理会社に連絡したのに1週間経っても直らないんです」。大阪市西区で不動産仲介をしていると、夏場にこうしたご相談をいただきます。借主さまは暑さで生活が成り立ちませんし、貸主さまにも「すぐ手配したいが業者が捕まらない」という事情があります。結論から申し上げると、条件が揃えば家賃は下がります。しかもそれは大家さんの好意ではなく、法律上当然に下がるという扱いです。この記事では、誰が直すのか、いくら下がるのか、そして実務で何を残しておくべきかを、西区の現場目線で整理します。
修繕するのは貸主の義務。出発点はここ
民法606条は、貸主は目的物の使用および収益に必要な修繕をする義務を負うと定めています。エアコン、給湯器、コンロなど、募集図面や契約書に「設備」として記載されていたものが壊れた場合、原則として直すのは貸主の負担です。借主さまが自分で費用をかぶる必要はありません。
ただし例外があります。同条のただし書により、借主の使い方が原因で壊れた場合は借主負担です。フィルターを何年も掃除せずに故障させた、無理な力をかけて部品を割ってしまった、といったケースが該当します。逆に、経年による自然故障であれば貸主が直すのが筋です。現場では「どちらが原因か」で見解が分かれることもありますので、使用状況をふだんから丁寧にしておくことが、結局はご自身を守ります。
もうひとつ、ここが最大の落とし穴なのですが、契約書に「エアコンは残置物」と明記されている場合があります。これは前の入居者が置いていった物を、貸主が好意で残しているだけという扱いです。設備ではないため、壊れても貸主に修繕義務はありません。撤去してもらうか、自費で交換するか、そのまま使い続けるかという話になります。募集図面に載っていたから設備だろうと思い込むのは危険で、判断の根拠になるのは契約書の記載です。契約時にこの一点を確認しておくだけで、後の揉め事はかなり減ります。
2020年4月から、家賃は「当然に」減額される
改正民法611条により、設備の故障などで賃借物の一部が使用できなくなり、それが借主の責めに帰することができない事由によるときは、家賃はその使用できなくなった部分の割合に応じて当然に減額されるとされています。
この「当然に」という言葉が重要です。改正前は、借主が減額を請求してはじめて減る仕組みでした。現在は請求の有無にかかわらず、法律上その分だけ減っているという整理に変わりました。とはいえ、実務で「では何割下がるのか」は明文化されていません。目安として参照されているのが、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会がまとめた資料で、設備ごとに免責日数を置いたうえで月額いくら相当という考え方が示されています。あくまで参考値であり、最終的な金額は当事者の話し合い、決着しなければ裁判所の判断になります。
ですから「法律で下がると書いてあるのだから、今月から勝手に引いて払う」という進め方は、おすすめできません。金額の根拠と対象日数を示し、貸主または管理会社と合意してから精算する。この順番を踏むかどうかで、話し合いの空気はまったく変わります。
実務で減額が通る人がやっている3つのこと
減額がすんなり通るかどうかは、法律よりも記録の有無で決まっている、というのが正直な実感です。故障に気づいたら、管理会社または貸主へ速やかに連絡してください。連絡が遅れると、その間の不便は減額の対象になりにくくなります。電話だけで済ませると「いつ言ったか」が残りません。メールやチャット、アプリの問い合わせフォームなど、日付と内容が残る形で伝えておくと確実です。電話で話した場合も、その後に「本日○時にお電話した件です」と一文送っておくだけで、立派な記録になります。
いつから使えなくなり、いつ復旧したのか。この日数が、減額計算の土台になります。スマートフォンのメモでも構いませんので、故障日、連絡日、業者が来た日、部品待ちと言われた日、復旧日を並べて残してください。室温が分かる写真や、エラー表示の写真もあると状況が伝わりやすくなります。実際の交渉では、感情よりも「何日使えなかったか」という数字のほうが強い材料になります。
民法607条の2は、借主が貸主へ修繕が必要である旨を通知したのに相当の期間内に修繕しないとき、または急迫の事情があるときに限り、借主が自ら修繕できると定めています。つまり順番があります。通知もせずに業者を手配し、その代金を家賃から差し引くと、かえって借主側が不利になりかねません。どうしても待てない事情があるときは、まず通知した事実を残し、そのうえで「何日待っても復旧しないため自分で手配します」と伝えてから動いてください。
「設備」と「残置物」で結論はここまで変わる
同じエアコンでも、契約書上の位置づけが違えば結論はまったく別になります。入居前に確認しておきたいポイントを、並べて整理しました。
| 確認項目 | 設備として記載 | 残置物として記載 |
|---|---|---|
| 貸主の修繕義務 | 原則あり(民法606条) | 原則なし |
| 故障時の費用負担 | 貸主(借主の過失による場合を除く) | 借主が自費交換、または撤去を依頼 |
| 家賃減額の対象 | なり得る(使用できない割合に応じて) | 原則ならない |
| 退去時の扱い | そのまま残す | 契約内容により、撤去を求められる場合も |
| 入居前に見る書類 | 賃貸借契約書・重要事項説明書の設備欄 | 同欄の但し書き、特約条項 |
なお、表の内容は一般的な整理です。契約書に個別の特約が置かれていることもありますので、実際の可否はご自身の契約書で確認する必要があります。判断に迷ったら、条文と契約書を突き合わせて読み解くところまでは、私たち不動産会社でお手伝いできます。
大阪市西区の建物事情から見た、設備トラブルの現実
西区は街ごとに建物の顔つきが違い、設備トラブルの出方も変わります。靭本町・京町堀はオフィスと住環境が同居するエリアで、管理体制の整ったマンションが多い一方、築年数を重ねた住戸では給湯器やエアコンが交換時期に差しかかっているものも見られます。南堀江・新町はデザイン性の高い小規模物件が多く、設備が個性的なぶん、部品の取り寄せに時間がかかるケースがあります。阿波座は複数路線が使える利便性から単身向けの供給が厚く、前の入居者の残置エアコンがそのまま引き継がれている部屋も少なくありません。
つまり「設備か残置物か」を入居時に確認する意味は、西区ではとくに大きいということです。私たちがお部屋をご案内するときは、募集図面の設備欄をそのまま読み上げるのではなく、契約書でどう書かれる予定なのか、故障したときは誰がどう動くのかまでお伝えするようにしています。真夏や真冬に設備が止まったとき、その一手間があったかどうかで、暮らしの安心はまったく違ってきます。
貸主さまの側にも申し上げたいことがあります。修繕の手配が遅れるほど、法律上は家賃が減っていく構造です。加えて、対応の遅さは退去理由になり、次の募集コストに跳ね返ります。夏場のエアコンは繁忙期で業者が捕まりにくいのが実情ですから、交換時期の近い設備を先に洗い出しておく。これが、収益を守るいちばん地味で確実な手段です。
よくある質問(FAQ)
A. 一律の金額は法律で決まっていません。参考値として、設備ごとに免責日数を置いたうえで月額いくら相当という業界資料が用いられており、エアコンの場合は数日程度の免責を経てから日割りで計算する考え方が一般的です。実際の金額は、部屋の状況や代替手段があったかどうかも踏まえた話し合いで決まります。合意できない場合の交渉や訴訟は弁護士の領域です。
A. まず契約書と重要事項説明書の設備欄を確認してください。残置物と明記されていれば、貸主に修繕義務はないという説明自体は法律上の整理に沿っています。ただ、撤去してもらって自分で設置する、費用の一部を負担してもらえるか相談する、といった現実的な落としどころはあります。記載が曖昧な場合は、設備として扱われるべきかどうかを争う余地もあります。
A. 民法607条の2により、修繕が必要である旨を通知したのに相当の期間内に修繕されないとき、または急迫の事情があるときは、借主が自ら修繕できます。ただし通知の事実が残っていることが前提です。連絡した記録を確保し、自分で手配する意思をあらかじめ伝えたうえで動いてください。通知を飛ばした先払いは、回収できない可能性があります。
株式会社クレアクロスは大阪市西区で賃貸・売買・収益・管理をワンストップで扱う不動産会社です。入居中の設備トラブルのご相談から、お部屋探し、住み替えに伴う売却査定、収益物件の設備更新計画まで、まずはお気軽にご相談ください。