大阪市西区を拠点に、賃貸・売買・収益・管理まで幅広く手がける不動産のプロ。肩書きに頼らず、お客さま目線での「損をしない判断材料」をお伝えすることを大切にしています。
この記事でわかること
- 管理費・修繕積立金の滞納があっても任意売却を進められる理由と、その前提条件
- 滞納額を「書面で確定させる」ための具体的な手順と、管理組合への確認のしかた
- 買主様への開示が宅地建物取引業法上の義務である理由と、隠した場合に起きること
滞納金は売却しても消えない。だから決済のときに精算する
まず押さえていただきたいのが、管理費・修繕積立金の滞納は「売った人に残る借金」ではなく「その部屋に付いていく債務」だという点です。建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第8条は、管理組合が滞納金を特定承継人、つまり新しく所有者になった人にも請求できると定めています。所有権を手放しても、滞納分が自動的にゼロになるわけではありません。
この条文は売主様にとって不利な話に見えますが、実務では逆に働きます。買主様は「引き渡された瞬間に前の所有者の滞納分を請求される立場」になるため、滞納が残ったままの部屋は買えません。だからこそ、任意売却の場面では売却代金の中から滞納分を精算し、管理組合への支払いを済ませたうえで所有権を移す形をとるのが一般的です。売主様の手元にお金がなくても、決済の場で代金から差し引いて支払えば清算できる。これが「滞納があっても売れる」という言葉の中身です。
ただし、住宅ローンの残債を下回る価格で売る任意売却では、その代金の使い道そのものに債権者の同意が必要です。滞納管理費をいくら差し引くかは売主様が決められる話ではなく、金融機関に配分の一部として認めてもらう必要があります。金額が大きければ交渉に時間がかかることもあるため、滞納額の把握は早いほど有利です。
最初にやることは、滞納額を書面で確定させること
以前担当させていただいた案件では、修繕積立金の滞納が2年近くに及んでいたケースがありました。このときは、まず管理組合に滞納額の正式な確認書を発行してもらい、決済(引渡し)の際に司法書士立会いのもとで、売却代金から滞納分を直接精算する形で解決しました。口頭の「だいたい何十万円くらい」では、金融機関への配分案にも重要事項説明書にも書けません。
確認の窓口は管理会社です。売買の実務では管理に関する重要事項調査報告書(数千円から1万円台の実費で発行されるのが一般的)を取得し、管理費・修繕積立金の月額、滞納額、修繕積立金の残高、大規模修繕の予定までまとめて確認します。ご自身で管理組合と交渉するのは精神的にも負担が大きいので、この書類の取得と滞納額の確定は担当者に任せていただいて構いません。
多くのマンションの管理規約には、滞納した管理費等に遅延損害金を付す定めがあり、督促に要した費用や弁護士費用を滞納者の負担とする条項が置かれていることもあります(国土交通省のマンション標準管理規約にも同趣旨の規定があります)。精算額を組み立てるときは、元金・遅延損害金・督促費用の三つに分けて確認書を出してもらうと、後からの追加請求で配分案が崩れるのを防げます。
管理費等の債権は民法上5年で時効にかかると解されていますが、管理組合が督促状を送り、訴訟や支払督促の手続をとれば時効の完成は猶予・更新されます。滞納が長期化している物件はすでに法的手続に入っていることも多く、待つほど遅延損害金が積み上がります。時効を当てにするのではなく、精算して早く手放すほうが負担は小さくなる可能性が高い、というのが実務の感覚です。
区分所有法は、管理組合に滞納金の先取特権(第7条)を与えているほか、区分所有者が共同の利益に反する行為をした場合には、その専有部分の競売を裁判所に請求できる制度(第59条)も定めています。長期の滞納を理由にこの手続が検討される段階に入ると、売主様が売却先や引渡し時期を選べる余地は急に狭くなります。督促状が届いている時点が、まだ選べるうちの相談どきです。
買主様への開示は義務。隠して進めた取引は壊れる
売る側の事情だけでなく、買主様の立場も忘れてはいけません。区分所有建物の売買では、宅地建物取引業法第35条とその施行規則にもとづき、管理費・修繕積立金の額に加えて滞納があるときはその額も重要事項説明の対象とされています。滞納があることを隠したまま契約を進めることはできませんし、そうすべきでもありません。
実務上も、隠して進めるほど取引は壊れやすくなります。買主様が住宅ローンを使う場合、金融機関は管理に関する重要事項調査報告書を確認します。そこで滞納が出てくれば、説明していなかった事実が審査の途中で露見することになり、信頼が崩れて白紙になることもある。反対に、最初から「滞納が○○円あります。決済日に代金から精算し、引渡し時点では残りません」と根拠を添えて示せば、買主様は安心して検討を進められます。滞納の事実そのものより、精算の段取りが見えているかどうかが判断を分ける、というのが現場での実感です。
私たちは常に、売主様・買主様どちらの立場から見ても納得できる進め方を心がけています。任意売却は売主様の事情が前面に出やすい取引ですが、最後に代金を払うのは買主様です。その方が不安なく決断できる情報の出し方をすることが、結果として売主様の回収額を守ることにもつながります。
大阪市西区のマンション事情から見た、滞納物件の動かし方
西区は街ごとに買主様の層が違うため、滞納を抱えた区分マンションの出し方も変わります。靭本町・京町堀は築年数を重ねた小規模マンションが多く、戸数が少ないぶん一戸あたりの滞納が修繕積立金の残高に与える影響が大きくなります。管理組合の側も回収に積極的なことが多いので、精算の段取りを先に提示すると話が早く進む傾向があります。
南堀江・新町は単身向けの住戸が多く、投資目的の買主様が中心になる場面もあります。投資家は管理組合の財務状況を数字で見るため、滞納額と精算方法を資料として整えておくことが価格の維持に直結します。阿波座は賃貸で使われている住戸の比率が高く、総会の出席率が上がりにくいために滞納への対応方針が定まっていないケースも見てきました。この場合は管理会社を通じて、誰が意思決定するのかを早めに確認しておく必要があります。
なお、住宅ローンの残債務そのものを減らす交渉や個人再生・自己破産といった債務整理は弁護士・司法書士の領域、抵当権抹消と所有権移転の登記は司法書士、譲渡所得の申告や税額の判断は税理士の領域です。私たちの役割は、いまの相場と売却の見通しを正直にお伝えし、管理組合・金融機関・買主様の三者の調整を同じ時間軸で回すところにあります。
ご相談から引渡しまでの流れ、債権者との調整について、公式サイトで詳しくご案内しています。
よくあるご質問
Q. 滞納した管理費は、売却代金から払ってもらえるのですか。
決済日に売却代金から精算する形が一般的です。ただし任意売却では代金の使い道に債権者の同意が必要なため、滞納管理費をいくら配分に含められるかは金融機関との協議によって決まります。金額が確定していないと協議に入れないので、まず管理組合の確認書を取ることから始めます。
Q. 滞納があることを買主様に伝えなくてもよい方法はありませんか。
区分所有建物の売買では、管理費等の滞納額は重要事項説明の対象です。伏せて進めることはできません。住宅ローンの審査過程で管理会社の報告書から判明することも多く、後から出てくるほど契約が壊れる可能性が高くなります。先に開示し、精算の段取りを示すほうが取引は安定します。
Q. 管理組合から訴訟を起こされています。もう任意売却は間に合いませんか。
段階によりますが、判決や競売の手続が進むほど選べる余地は狭くなります。一方で、精算の見込みが立つなら管理組合にとっても回収できる金額が増えるため、話し合いの余地が残っている場面もあります。まずは現状の書類をお持ちいただき、どの段階にいるのかを一緒に確認させてください。
靭本町・京町堀・南堀江・新町・阿波座を中心に、任意売却・住宅ローンの滞納・区分所有マンションの管理費精算に関するご相談へワンストップで対応しています。