大阪市西区を拠点に、賃貸・売買・収益・管理まで幅広く手がける不動産のプロ。肩書きに頼らず、お客さま目線での「損をしない判断材料」をお伝えすることを大切にしています。
この記事でわかること
- 生前贈与で見落とされやすい「贈与税以外の費用」の中身
- 相続でしか使えない特例を手放してしまうリスク
- 大阪市西区の実家を渡すとき、どの順番で考えると迷いにくいか
生前贈与の負担は「贈与税だけ」ではない
生前贈与の相談で最初に話題になるのは、ほぼ例外なく贈与税です。年110万円の基礎控除に収まるかどうか、相続時精算課税を選ぶかどうか。もちろん大切な論点ですが、贈与税がゼロで済んだのに、終わってみると数十万円が出ていったというご相談は珍しくありません。
理由はシンプルで、不動産の名義を動かすという行為そのものにコストがかかるからです。登記のときにかかる税金、取得したことに対してかかる税金、専門家への報酬。そして金額としては表に出てこないけれど、実は最も大きい「相続まで待てば使えたはずの特例を手放す」という見えない負担があります。
大阪市西区のように土地の評価が高く出るエリアでは、この見えない負担の影響が特に大きくなります。まずは、目に見える費用から順番に確認していきましょう。
名義を移すだけでかかる4つの費用
不動産を生前に渡す場合、実際にかかるのは主に次の4つです。金額の目安が分かるだけでも、進めるかどうかの判断はぐっとしやすくなります。
所有権移転登記にかかる税金です。贈与による移転は固定資産税評価額の2%、相続による移転は0.4%。同じ不動産でも渡すタイミングが違うだけで、税額に5倍の差が出ます。
贈与で取得した場合は課税されますが、相続による取得は非課税です。住宅や土地には軽減措置がありますが、条件を満たさなければゼロにはなりません。
登記申請を依頼する報酬に加え、登記事項証明書や評価証明書などの実費がかかります。持分だけを毎年少しずつ移す方法を選ぶ場合、この費用が回数分だけ積み上がる点は見落とされがちです。
名義が変われば、翌年からの固定資産税・都市計画税は受け取った側に届きます。学費や住宅ローンを抱える世代に渡す場合、ここまで含めて家族で共有しておくと安心です。
たとえば固定資産税評価額1,500万円の自宅を贈与した場合、登録免許税だけで30万円。これが相続による移転なら6万円です。ここに不動産取得税と司法書士報酬が乗ってきます。「贈与税がかからない範囲で渡したはずなのに、思ったより出ていった」というのは、この部分を計算に入れていなかったケースです。なお税率や軽減措置は改正されることがありますので、実行前に必ず税理士へご確認ください。
相続でしか使えない特例を手放していないか
ここが、金額として見えにくいのに、いちばん影響の大きいポイントです。
小規模宅地等の特例は、一定の要件を満たせば居住用の宅地を330㎡まで評価額80%減で計算できる制度です。ただしこれは、相続または遺贈で取得した場合の制度です。生前に贈与で名義を移してしまうと、その土地には使えません。
大阪市西区の土地は評価額が高く出ます。靭本町や京町堀のように利便性の高いエリアであればなおさらで、「家を早めに渡したことでこの特例が使えなくなり、結果として相続税が増えた」という展開は、実際に起こり得ます。目先の贈与税を避けるために動いた結果、将来の相続税が増えるのでは本末転倒です。
もう一点、暦年贈与についても押さえておきたい変更があります。相続開始前の一定期間に受けた贈与は相続財産に加算されますが、この加算期間が従来の3年から順次延長され、7年になる制度に変わっています。「毎年110万円ずつ渡していく」方法を考えているなら、始めるのが早いほど意味があるということです。逆に言えば、健康面の不安が出てから慌てて始める暦年贈与は、期待したほどの効果が出にくくなっています。
それでも生前贈与が効く場面はある
ここまで読むと「では相続まで待てばいいのか」と思われるかもしれませんが、そうとも限りません。生前贈与が明確に効く場面もあります。
ひとつは収益物件です。賃貸マンションやアパートを早めに渡しておけば、その後の家賃収入は受け取った側に入ります。親御さんの手元に現金が積み上がって相続財産が膨らんでいくのを抑えられますし、受け取った側にとっては返済実績や収入源になります。西区や周辺エリアで一棟物件を保有されている方には、検討する価値のある選択肢です。
もうひとつは認知症リスクへの備えです。判断能力が低下してしまうと、実家の売却も大規模な修繕も止まります。今年も「売れるはずの家が動かせない」というご相談を何件もいただきました。空室のまま固定資産税だけを払い続ける、修繕が必要なのに工事契約が結べない――こうした状態は、家族にとって金銭面でも心情面でも負担になります。この備えとしては、贈与だけでなく家族信託という選択肢もあります。
つまり生前贈与は「節税の手段」というより、渡すタイミングを自分たちで選べる手段と捉えると、判断を誤りにくくなります。税金が安くなるかどうかだけを軸にすると、費用と特例の話が抜け落ちてしまいます。
大阪市西区で実家を渡す前に整理すること
相続と生前贈与のどちらが有利かは、ご家庭の財産構成と相続人の人数で結論が変わります。同じ条件の家庭はほとんどありません。そのうえで、私が現場でお伝えしているのは「順番」です。
先に決めるべきは、その不動産を最終的にどうするのか。子が住み継ぐのか、いずれ売却するのか、賃貸に出して収益化するのか。ここが決まっていないまま名義だけを動かすと、後から選択肢が狭まります。たとえば将来の売却を予定しているのに持分を分散させすぎると、売るときに全員の合意が必要になり、かえって手間が増えます。
西区の街ごとの性格も判断材料になります。靭本町・京町堀は事務所需要と住宅需要が重なり、築年数が経っても比較的値が落ちにくいエリアです。南堀江・新町は小規模なマンションが多く、単身から二人暮らしの実需が中心。阿波座は交通利便性のわりに価格がこなれており、買主層の幅が広いのが特徴です。売りやすい物件なのか、持ち続けるほうが向く物件なのかによって、渡し方の最適解は変わってきます。
税額の最終判断は税理士、登記は司法書士の領域です。ただ、その前に「その不動産は今いくらなのか、将来売れるのか」を把握しておかないと、そもそも比較の土俵に乗りません。評価額を知り、売れる価格帯を知り、そのうえで贈与と相続を並べて比べる。この順番を守るだけで、判断の精度は大きく変わります。動く前の段階でご相談いただくのが、結果的にいちばん損をしない進め方です。
よくあるご質問
Q. 贈与税がかからない範囲で渡せば、費用はほとんどかかりませんか?
いいえ、贈与税がゼロでも、登録免許税・不動産取得税・司法書士報酬などはかかります。持分を毎年少しずつ移す方法では登記の費用が回数分だけ発生します。金額の目安は評価額によって変わりますので、実行前に税理士・司法書士にご確認ください。
Q. 実家を生前に渡すと、小規模宅地等の特例は使えなくなりますか?
小規模宅地等の特例は相続または遺贈で取得した場合の制度のため、生前贈与で名義を移した土地には適用されません。大阪市西区のように評価額が高いエリアでは影響が大きくなる可能性があります。適用可否の判断は税理士へご相談ください。
Q. 認知症が心配なのですが、贈与しかないのでしょうか?
贈与のほかに家族信託という選択肢もあります。判断能力が低下すると売却も修繕も止まってしまうため、備え方は複数あると考えておくのが安心です。どの方法が向くかは、物件の種類やご家族の状況によって変わります。
靭本町・新町・南堀江・京町堀・阿波座を中心に、相続不動産の生前贈与・売却・資産活用までワンストップでサポートしています。