この記事を書いた人:重村裕一(宅地建物取引士)
株式会社クレアクロス 代表取締役。大阪市西区で賃貸・売買・収益物件・管理を一貫して扱い、相談実績は1,100件を超えます。「損する人をゼロにしたい」を基準に、オーナー様が払わなくていい費用と、避けられる空室期間をお伝えしています。
この記事でわかること
- 管理会社の変更はオーナーの判断でできる。ただし解約予告期間(多くは3か月)がある
- 引き継ぐべき6点——契約書原本・敷金・入居者情報・鍵・滞納状況・修繕履歴
- 賃貸住宅管理業法による登録制度と、次の会社を選ぶときの確認項目
- 変更に向くタイミングと、変えないほうがいいケース
- 大阪市西区の物件事情とFAQ
変更はできます。縛られているのは契約ではなく予告期間です
「一度管理を任せたら、変えられないのではないか」とよく聞かれます。変えられます。
管理委託契約は、オーナーと管理会社の間の契約です。入居者との賃貸借契約とは別のものなので、管理会社を変えても入居者との契約はそのまま続きます。入居者に出ていってもらう必要も、契約を結び直す必要もありません。
では何に縛られるのか。解約予告期間です。
管理委託契約書には、ほぼ必ず解約に関する条項があります。実務でよく見るのは「3か月前までに書面で通知する」というものです。1か月前のものもありますし、6か月前のものもあります。
そしてもう一点、自動更新条項に注意してください。「期間満了の◯か月前までに申し出がない場合は同一条件で更新する」という条項が入っていることが多く、更新のタイミングを過ぎると次の期間まで動けなくなります。
つまり、変更を考えはじめた時点でまずやることは、管理会社への連絡ではありません。手元の管理委託契約書を出して、解約条項と更新条項を読むことです。
引き継ぐものは6点。ここが抜けると空室より痛い
管理会社の変更でトラブルになるのは、解約そのものではなく引継ぎです。何を受け取るべきかを先に把握しておいてください。
| 引き継ぐもの | 抜けたときに起きること |
|---|---|
| 賃貸借契約書の原本 | 退去時に原状回復の特約を主張できない。更新や家賃改定の交渉で根拠を示せない |
| 敷金・保証金 | 管理会社が預かったままだと、退去時に返還できず入居者ともめる。オーナーが立て替える事態になる |
| 入居者情報 | 緊急連絡先・勤務先・保証会社の情報が消える。滞納や事故が起きたときに手が打てない |
| 鍵(マスター・予備) | 緊急時に部屋に入れない。全戸の鍵交換が必要になることもある |
| 滞納状況と督促の履歴 | どこまで請求済みかが不明になる。保証会社への請求期限を逃す |
| 修繕・設備の履歴 | 設備の交換時期が読めない。保証期間内の無償修理を有償でやってしまう |
※上記のほか、火災保険の加入状況、保証会社との契約内容、鍵の本数台帳、進行中の原状回復案件の状況も確認対象になります。
この中で実務上もっとも揉めるのは敷金です。管理会社が預かっているケースでは、解約時に返還を受けないと、退去が出たときに返すお金がありません。契約書で誰が預かる建付けになっているかを確認し、解約の通知と同時に返還を求めてください。
そして進行中の案件があるなら、その扱いを先に決めてください。退去の立会いが予定されている、原状回復の見積りを取っている最中、滞納の督促をしている——こういう案件が引継ぎの境目に落ちると、どちらの会社も対応しない期間ができます。
次の会社を選ぶとき、最初に見るのは登録の有無
2021年に全面施行された「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(賃貸住宅管理業法)により、管理戸数200戸以上の賃貸住宅管理業者は国土交通大臣の登録が義務になりました。200戸未満は任意登録です。
登録業者には、次のことが義務づけられています。
- 業務管理者の配置(事務所ごとに1名以上)
- 管理受託契約の重要事項説明(契約前に書面で説明する/法13条)
- 契約書面の交付(法14条)
- 財産の分別管理(オーナーの家賃を自社の財産と分けて管理する/法16条)
- 定期報告(管理業務の実施状況を報告する/法20条)
この5つのうち、オーナーにとって実利が大きいのは分別管理と定期報告です。分別管理は、管理会社の資金繰りが悪化したときに家賃が巻き込まれないための仕組みです。定期報告は、何をやっているのかが見える状態を保つための義務です。
登録されているかどうかは、国土交通省の「賃貸住宅管理業者登録情報検索システム」で確認できます。会社名を入れるだけです。
そのうえで、契約前に確認したい項目を挙げます。
- 管理料の料率と、その中に何が含まれるか——賃料の3〜5%が一般的ですが、重要なのは率より範囲です。入居者対応・集金・督促・更新手続き・退去立会い・原状回復の手配のうち、どこまでが管理料の中で、どこから別料金なのか
- 入居者からの一次対応を誰がするか、何時までか——夜間と休日の体制。ここが外部コールセンターなのか自社なのかで、対応の質が変わります
- 報告の頻度と形式——月次か四半期か。入出金の明細が出るか
- 空室時の募集方法——自社客付けか、他社に広く流すか。自社で抱えると決まるのが遅くなることがあります
- 原状回復の見積りを誰が出すか——系列の工事会社に固定されていると、単価の妥当性が見えません
- この会社の解約予告期間——次を選ぶ時点で、その次に動けるかを確認しておく
正直に言うと、変えないほうがいい場合があります
ここは書いておきます。管理会社の変更は、常に正解ではありません。
変えないほうがいいケース
- 満室で、入居者と管理会社の関係が安定している——引継ぎのリスクのほうが大きい。管理料が1%高いことより、入居者が困らないことのほうが価値があります
- 不満の原因が管理ではなく、物件か賃料設定にある——家賃が相場より高ければ、どの会社に任せても決まりません。会社を変えても空室は埋まりません
- 担当者個人への不満である——まず担当者の変更を申し出てください。会社を変えるより早く、引継ぎのリスクもありません
- サブリース(一括借上げ)契約である——これは管理委託ではなく、管理会社がオーナーから借りている賃貸借契約です。借地借家法の保護を受けるため、オーナー側から簡単に終わらせられません。別の判断が必要になります
変更を検討する価値があるケース
- 空室が3か月以上埋まらず、募集条件の提案が一度も来ていない
- 報告がなく、こちらから聞かないと状況がわからない
- 原状回復の見積りが毎回同じ工事会社で、相見積りを断られる
- 入居者からオーナーに直接クレームが来ている(管理会社が機能していない証拠です)
- 家賃の入金が遅れることがある(分別管理が疑われます)
一番下は深刻な兆候です。入金の遅れが続く場合は、変更の検討より先に、賃料の振込先と管理の実態を確認してください。
変更に向くタイミングは、空室のときです
段取りとしては、次の順番がもっとも痛みが少ないです。
1. 管理委託契約書の解約条項と更新条項を読む
予告期間と、次の更新日を確認します。ここで動ける時期が決まります。
2. 次の会社を決めてから、現管理会社に通知する
順番を逆にすると、予告期間の3か月を管理不在で過ごすことになります。次を決めてから通知してください。
3. 通知は書面で、日付が残る形で出す
電話だけでは「聞いていない」になります。契約書に書面の指定があればそれに従い、なければ記録が残る方法を選んでください。
4. 引継ぎ6点の受け渡し日を、通知と同時に決める
後回しにすると引継ぎが曖昧なまま期限が来ます。特に敷金と鍵は日付を決めてください。
5. 入居者へ連絡先と振込先の変更を通知する
オーナー(貸主)は変わらないので契約の結び直しは不要ですが、家賃の振込先と問い合わせ先が変わる場合は通知が必要です。この通知は新しい管理会社が作成するのが通常です。
タイミングについて。空室が出ている時期が変更に向いています。入居者対応が走っていないので引継ぎが軽く、新しい会社の募集力をそのまま試せます。逆に満室で更新時期が重なっている時期は、引継ぎの負荷が一番高くなります。
大阪市西区の賃貸経営から見た、管理の実情
当社が拠点を置く大阪市西区は、単身者向けと分譲賃貸の比率が高い区です。管理の中身もそれに合わせて変わります。
靱本町・本町周辺は、オフィス街に隣接した単身者向けマンションが中心です。入居期間が2〜4年と短く、回転が速いぶん募集力が収益を決めます。空室1か月の損失が年間収益に直接響くので、「決まるまでの日数」を報告してもらえているかが判断材料になります。管理料の1%差よりも、空室期間が2週間短いほうが金額としては大きくなります。
堀江・南堀江は、デザイナーズやリノベーション物件の比率が高いエリアです。設備が特殊なため修繕単価が読みにくく、系列工事会社に固定されていると妥当性が見えません。相見積りを取れる体制かどうかが、ここでは効きます。
九条・弁天町周辺は、築年数の経った物件が多いエリアです。設備交換の判断が頻繁に発生するため、修繕履歴が引き継がれているかが実務上もっとも重要になります。履歴がない状態で管理を受けると、交換時期が読めず、突発対応が続きます。
区分1戸だけを所有されている方も西区には多くいらっしゃいます。1戸の場合、管理会社の変更より先に「管理を委託する必要があるか」から考える余地があります。ご自身の状況で判断が変わるので、戸数と空室状況を教えていただければ具体的にお答えします。
よくある質問(FAQ)
Q. 管理会社を変えると、入居者に出ていってもらう必要がありますか。
A. ありません。管理委託契約はオーナーと管理会社の契約で、入居者との賃貸借契約とは別のものです。貸主はオーナーのまま変わらないので、入居者との契約もそのまま続きます。必要なのは、家賃の振込先と問い合わせ先が変わる場合の通知だけです。
Q. 解約を申し出たら、違約金を請求されました。払う必要がありますか。
A. 契約書に違約金の条項があるかどうかで変わります。条項がある場合でも、金額が合理的な範囲かという論点は残ります。まず契約書の該当条項を確認し、請求の根拠を書面で示してもらってください。金額の妥当性や支払義務の有無についての最終判断は弁護士の業務範囲になりますので、争う意思が固まった段階ではそちらにご相談ください。
Q. 敷金を管理会社が預かったままです。返してもらえますか。
A. 契約内容によりますが、敷金は本来オーナーが預かるべきものです。管理会社が預かる建付けになっている場合でも、管理委託契約の終了にあたって精算の対象になります。解約の通知と同時に、全戸分の敷金の金額と返還時期を書面で確認してください。ここを曖昧にしたまま契約が終わると、退去が出たときに返還原資がない状態になります。
Q. 今の管理会社に不満はありませんが、管理料が高い気がします。
A. 率だけでは判断できません。管理料に含まれる業務範囲を確認してください。3%でも退去立会いと更新手続きが別料金なら、5%で全部込みより高くつくことがあります。年間の実費を合計して比べるのが正確です。当社でよろしければ、現在の契約書を見て範囲の比較表をお作りします。
Q. 1戸だけの区分マンションです。管理会社に頼む意味はありますか。
A. お住まいの場所と、対応にかけられる時間で変わります。物件の近くにお住まいで、入居者からの連絡に対応できるなら、委託せずに運用されている方もいます。一方で遠方にお住まいの場合や、夜間の対応が難しい場合は委託の価値が出ます。戸数が少ないほど管理料の絶対額は小さいので、判断は「金額」より「対応できるか」になります。
「今の契約だと、いつから動けるのか」からお調べします
管理委託契約書の解約条項の部分を写真で送っていただければ、いつ通知すればいつ動けるかをお伝えします。あわせて管理料に含まれる業務範囲を読み、現在の条件が相場からどう離れているかもお伝えします。変えないほうがいいと判断した場合は、そう申し上げます。
空室が続いている物件については、募集条件の見直し案を複数作ってお出しします。家賃を下げる前に、やれることが残っている場合があります。
「管理」の2文字だけで結構です。物件の所在地と戸数は後からで構いません。
株式会社クレアクロス(大阪市西区靱本町・本町駅徒歩1分/10:00〜19:00・水曜定休)
大阪府知事免許(2)第62025号
本記事は2026年10月時点の法令および実務慣行に基づいて作成しています。解約予告期間・違約金・敷金の取扱いは管理委託契約書の内容によって異なりますので、必ずご自身の契約書をご確認ください。契約解釈をめぐる紛争の解決、違約金支払義務の最終判断については弁護士の業務範囲となります。サブリース(一括借上げ)契約の場合は本記事とは異なる判断が必要です。