重村 裕一
(株式会社クレアクロス 代表取締役/宅地建物取引士)
大阪市西区を中心に、賃貸・売買・収益物件・管理のご相談をお受けしています。ご本人からのご相談だけでなく、離れて暮らすご家族からの住み替えのご相談も同じ窓口でお聞きしています。
この記事でわかること
- 退去の期限が決まってから動きはじめたときの、現実的な時間の使い方
- 緊急連絡先・連帯保証人・受任者・保証会社の役割がどう違うのか
- ご家族が引き受ける前に確認しておきたい責任の範囲
- 残置物のモデル契約条項で、受任者を親族が担うときの実務
- 大阪市・大阪府の居住支援の窓口と、仲介会社との役割分担
大阪市西区での実績
11年
不動産実務
西区中心
賃貸・売買・管理
1つの窓口
相談から入居まで
「親のアパートが建替えになって、退去の期限が決まってしまった」。離れて暮らすお子さんや甥姪の方から、こうしたご相談をいただくことがあります。ご本人が何社も回って断られたあと、ご家族に相談が来るという順番も少なくありません。この記事は、ご本人向けの入居審査の通し方ではなく、支える側のご家族が何を引き受け、どの順番で動けばよいのかに絞って整理しました。期限から逆算する段取りと、引き受ける責任の範囲を先に知っておくと、判断がぐっと楽になります。
ご家族に相談が来るのは、たいてい期限が決まったあと
建替えや取り壊しによる退去は、貸主から正当な事由にもとづく解約の申入れがあり、借地借家法27条により申入れから6か月で契約が終了するという流れになります。立退料や明渡しの時期について話し合いが進んでいれば、実際の期限はその合意で決まります。いずれにしても、ご家族のところに話が来る時点で、残り時間はすでに数か月まで縮んでいることが多いのです。
ここで起きやすいのが、ご本人が先に何社も回って断られ、気持ちが折れてしまってから相談が来る、という順番です。断られた回数が増えるほど「もう無理かもしれない」という前提で動くことになり、条件を下げる方向にばかり力が入ってしまいます。実際には、断られた理由を一つずつ埋める準備ができれば、決まる物件はあります。ご家族が入ったほうが早いのは、その準備の多くが「ご本人以外の誰かが引き受ける」という形でしか成り立たないからです。
最初にしていただきたいのは、物件探しではなく情報の確定です。退去の期限、いまの家賃と年金等の収入、ご本人が動ける範囲、そしてご家族のうち誰がどこまで関われるのか。この4点が決まっていれば、仲介会社は貸主に対して具体的な提案ができます。逆に、ここが曖昧なまま内見だけを重ねると、申込みの直前で止まってしまいます。
貸主が心配しているのは年齢ではなく、連絡がつかないこと
貸主の方にお話を聞くと、断る理由はおおむね三つに集約されます。家賃を払えなくなったときにどうするか、お部屋で亡くなられたときに誰が対応するのか、残された家財をどう片付けるのか。どれも「年齢」そのものではなく、そのあとの手続きに人がいるかどうかの話です。
法律の建て付けを押さえておくと、この不安の正体がはっきりします。借主が亡くなっても賃貸借契約は自動的には終わりません。借りる権利は相続人に引き継がれます(民法896条)。つまり、解約も家財の片付けも、相続人の意思がないと進まないのです。相続人が遠方だったり、連絡が取れなかったり、相続人同士で意見が分かれたりすると、お部屋は空いているのに次に貸せない状態が続きます。貸主が一番こわいのは、この「誰にも連絡がつかない状態」です。
ここが分かると、ご家族が引き受けるべきものの意味も変わってきます。求められているのは、金銭的な保証そのものよりも、何かあったときに手続きを進められる人が決まっていることです。そして、その「決まっていること」を書面で見える形にすることが、仲介会社の仕事になります。
連絡がつく窓口になる
緊急連絡先として、日中つながる電話番号を出します。金銭的な義務は負いませんが、実際には最初に電話が来る立場です。勤務中に出られない時間帯があるなら、それも伝えておくほうが信頼されます。
保証の形を選ぶ
家賃債務保証会社を使うのか、ご家族が連帯保証人になるのかを決めます。個人が連帯保証人になる場合、2020年4月の改正民法により、根保証契約では極度額(上限額)を定めなければ効力が生じません。金額を必ず確認してください。
残置物の受任者を決める
国土交通省と法務省が公表している「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を使い、亡くなったときの解約と家財の処理を引き受ける人を契約で先に決めておきます。推奨されているのは第三者ですが、事情により親族が担う例もあります。
見守りの仕組みを足す
電気やガスの使用状況で異変を知らせるサービスなどを、ご本人の了解のうえで導入します。ご家族が毎日連絡するより続きますし、貸主にとっては「早く気づける」ことが安心材料になります。
| 役割 | 何を引き受けるか | お金の負担 | 家族が担うときの注意 |
|---|---|---|---|
| 緊急連絡先 | 安否や事故の連絡を受ける窓口 | 原則なし | 義務はないが実際の連絡は集中する |
| 連帯保証人 | 家賃や原状回復費の支払い義務 | 極度額の範囲で負う | 極度額の記載がなければ効力が生じない |
| 家賃債務保証会社 | 滞納時の立替え(求償あり) | 初回と年次の保証料 | 高齢の方の受入条件は会社ごとに違う |
| 残置物の受任者 | 死亡後の解約と家財の処理 | 処理費用の出どころを先に決める | 相続人との関係を契約書で整理しておく |
引き受ける前に、ご家族が確認しておきたいこと
ご家族からよく聞かれるのは「どこまで責任を負うことになるのか」です。ここは曖昧にせず、書面の文言で確認してください。緊急連絡先は、契約上の支払義務を負うものではありません。一方、連帯保証人は家賃も原状回復費も負います。個人が将来発生する不特定の債務を保証する形になるため、改正民法のもとでは極度額の定めが必須です。契約書に金額が書かれていなければ、その保証は効力を持ちません。頼まれた側が確認すべき、いちばん具体的な一点です。
残置物の受任者については、モデル契約条項では管理業者や居住支援法人といった第三者が担うことが望ましいとされています。親族が受任者になる場合は、相続人としての立場と受任者としての立場が重なるため、処理費用をどこから出すのか、他の相続人に事前に伝えてあるのかを整理しておくと、あとのもめごとを避けられます。遺品の扱いについて「廃棄してよいもの」と「送付してほしいもの」を分けて書いておく運用も、実務上は役に立ちます。
もう一つ、ご家族が遠方の場合は、その事実を隠さないほうが結果がよくなります。神戸や京都から1時間で来られるのか、関東から半日かかるのかで、貸主の受け止め方は変わります。遠方であっても、見守りサービスと受任者の取り決めがそろっていれば、連絡がつかない空白は埋まります。距離そのものが断る理由になるわけではありません。
退去期限から逆算する、おおよその段取り
期限まで2か月あるなら、順番はこう組みます。最初の1週間で情報の確定。収入の資料、退去通知の写し、ご家族の役割分担を紙にします。次の2週間で保証会社の目処を立て、同時に条件に合う住戸を絞ります。エレベーターの有無、1階または低層階、浴室の段差、生活導線の短さ。この段階で貸主側に出す資料も作ります。
その次の2週間で内見と申込み。ここで「保証会社・緊急連絡先・見守り・残置物の取り決め」を1枚にまとめて提出します。条件を後から足すのではなく、申込みと同時に出すのがこつです。残りの3週間を審査と契約、ライフラインの手続き、引越しに充てます。ぎりぎりではありますが、ご家族が入っていれば回る時間配分です。
制度の面も少しずつ追いついてきています。2025年10月に施行された改正住宅セーフティネット法では、見守りなどの居住サポートを行う「居住サポート住宅」の認定制度や、家賃債務保証業者の認定制度が始まりました。大阪府・大阪市にも居住支援の相談窓口があります。ただ、制度があっても、それを貸主に伝えて一緒に準備する人がいなければ、お部屋は決まりません。窓口に相談しつつ、物件側の交渉は仲介会社が担う、という役割分担が現実的です。
大阪市西区でご家族と一緒に動くときに
西区は靭本町・京町堀・新町・南堀江・阿波座と性格の違うエリアが並び、同じ家賃帯でも建物の作りがかなり違います。阿波座や靭本町には築年数が経っていてもエレベーター付きの中規模マンションがあり、1階や2階の住戸が出ることもあります。新町や南堀江の分譲賃貸は設備が整っている一方で、貸主がオーナー個人の場合は判断に時間がかかることもあります。どちらが向くかは、通院先やご家族の来やすさも含めて決めるのが現実的です。
当社は賃貸の仲介だけでなく管理も担っているので、貸主側がどこに不安を感じるかを内側から見てきました。だからこそ、断られた理由を感情ではなく課題として並べ替え、埋められるものから順に埋めていく進め方ができます。「もう無理かも」とご本人が言い出す前に、ご家族の側から一度ご相談いただければ、使える時間はまだ残っています。
よくあるご質問
Q. 遠方に住んでいても緊急連絡先になれますか。
なれます。距離そのものが要件になっているわけではなく、連絡がついて、必要なときに判断してもらえることが求められています。すぐ駆けつけられない場合は、見守りサービスや残置物の受任者の取り決めを組み合わせて、空白が生まれない形にしておくと貸主も納得しやすくなります。
Q. 連帯保証人を頼まれましたが、断ってもよいのでしょうか。
断っていただいて構いません。いまは家賃債務保証会社の利用が一般的で、ご家族は緊急連絡先だけという形も多くあります。引き受ける場合は、契約書に極度額(上限額)が記載されているかを必ず確認してください。記載がない個人の根保証は効力が生じないため、金額の確認はご自身を守ることにもつながります。
Q. 親の判断力に不安があるときはどうなりますか。
契約はご本人の意思で結ぶものですので、不安がある場合は無理に進めず、成年後見などの制度を含めて専門家に相談する流れになります。ご家族が代わりに署名する形は、後々の効力に疑問が残ります。判断に迷う段階でしたら、まず現状をお聞かせください。どの専門家につなぐべきかの整理からお手伝いできます。
ご家族からのご相談も、同じ窓口でお聞きします
退去の期限、保証の形、受任者の決め方まで、大阪市西区のお部屋探しに絞ってお手伝いします。ご本人が動けない段階のご相談でも構いません。
関連情報
- 対応エリア:大阪市西区(靭本町・新町・南堀江・京町堀・阿波座ほか)
- 取り扱い:賃貸の仲介と管理、中古マンション・一戸建ての売買、収益物件
- 株式会社クレアクロス/宅地建物取引士 重村裕一
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