株式会社クレアクロス代表取締役。大阪市西区で賃貸・売買・収益・管理まで幅広く不動産の相談を受ける。肩書きより「自分の家族に勧められるか」を判断のものさしにしている。
- 中古マンションの値引き(指値)が通るかどうかを左右する本当の要因
- 売主が個人か買取再販業者かで、交渉の余地がまったく変わる理由
- 売り出しからの経過期間と価格改定履歴の調べ方
- 金額ではなく条件で交渉するという、現場で実際に効く進め方
- 大阪市西区(靭本町・新町・南堀江・京町堀・阿波座)の相場感とFAQ
「この中古マンション、いくらまで値引きできますか」。大阪市西区で仲介をしておりますと、内覧のあとにほぼ必ずいただくご質問です。インターネット上には「中古なら1割は引ける」といった情報も出回っていますが、現場の実感はまったく違います。値引きが通るかどうかは、買主の交渉術ではなく、売主側の事情でほぼ決まるからです。この記事では、指値の現実的な考え方と、交渉できる物件かどうかを事前に見分けるための手順を整理します。
値引きは交渉術ではなく、売主の事情で決まる
指値の相談をいただくとき、多くの方が気にされるのは「どう言えば安くしてもらえるか」という言い方の問題です。ところが実際の取引を振り返ってみますと、交渉がまとまるかどうかを決めているのは、買主の話し方ではありません。売主がその価格を下げられる状態にあるか、そして下げてでも売りたい時期に来ているか。この二点でほとんど説明がついてしまいます。
逆に言えば、下げられない事情を抱えた売主に対しては、どれだけ丁寧に交渉しても金額は動きません。粘れば粘るほど話がこじれ、結果として他の買主に決まってしまうことすらあります。ですから交渉の第一歩は、値引き額をいくらにするかを考えることではなく、この物件は交渉できる物件なのかを調べることだと考えています。順番を逆にすると、時間も労力も無駄になってしまいます。
交渉の前に確認したい3つのこと
中古マンションの売主は、大きく個人と不動産会社(買取再販業者)に分かれます。ここを混同すると交渉は空振りします。個人が売主の場合、価格の背景にあるのは住宅ローンの残債と、住み替え先の予算です。残債を下回る金額では原則として抵当権を外せず、引渡しができません。つまり「あと100万円下げてほしい」という要望が、気持ちの問題ではなく物理的に不可能なことがあるわけです。一方、買取再販物件は仕入れ値とリフォーム費用に利益を乗せた価格です。在庫を持つ期間が延びるほど金利負担が増えるため、決算期や仕入れから時間が経った物件では調整の余地が生まれやすくなります。
売主が価格を見直すタイミングには、実は型があります。媒介契約は一般的に3か月ごとの更新ですので、この節目に価格改定が行われやすいのです。売り出した直後の物件に大幅な指値を入れても、まず通りません。売主も担当の仲介会社も、まだ反応を見たいという段階だからです。逆に、売り出しから3か月・6か月と経過し、すでに一度値下げされている物件は、売主の気持ちが売り切る方向に動いています。レインズの登録日や過去の価格改定の履歴は、担当の仲介会社に聞けば調べられます。ここを確認せずに、とりあえず1割と言ってしまうのは、正直なところもったいない交渉です。
同じマンション内に売り出し中の住戸が複数あるか、周辺で似た条件の物件がどれだけ動いているかも、交渉余地を左右します。競合が少なく問い合わせが続いている物件では、売主が値下げに応じる理由がありません。反対に、同じ建物で複数の住戸が長く残っている状況なら、売主も相場を意識せざるを得ません。あわせて、同じ建物の過去の成約価格を確認しておくと、自分の希望額が根拠のある数字なのかどうかがはっきりします。成約事例は仲介会社がレインズで調べられますので、内覧の段階で依頼しておくと、申込みのときに慌てずに済みます。
売主のタイプ別に見る、交渉の余地
売主が誰かによって、価格の決まり方も、動かせる部分もまったく異なります。下の表は、私が現場で目安にしている整理です。あくまで傾向ですので個別の事情によって変わりますが、はじめに全体像を持っておくと、交渉の見通しが立てやすくなります。
| 売主のタイプ | 価格の決まり方 | 交渉で効きやすい材料 |
|---|---|---|
| 個人(住み替え) | ローン残債と次の住まいの予算が下限になる | 引渡し時期を売主の都合に合わせる |
| 個人(相続・空き家) | 残債がなく、維持費や管理の手間が判断材料になりやすい | 残置物の撤去を求めない、早期決済 |
| 不動産会社(買取再販) | 仕入れ値+リフォーム費用+利益 | 在庫期間の長さ、決算期、確実に決済できる資金計画 |
| 売り出し直後の物件 | まず反応を見る強気の設定になりやすい | 大幅な指値は通りにくく、条件面での勝負になる |
なお、宅地建物取引業者が売主となる取引では、契約不適合責任を引渡しから2年以上負う特約が宅建業法で義務づけられています。個人が売主の場合は、責任の期間を短くしたり免責としたりする特約が置かれることも珍しくありません。買取再販物件の価格には、この安心のぶんが含まれているとも言えます。単純な金額の比較だけでなく、引き受けるリスクの違いもあわせて見ておきたいところです。
金額ではなく、条件で取りにいく
私が現場でお伝えしているのは、値引きは購入申込書(買付証明書)に根拠とセットで書く、ということです。同じ階の別住戸が3か月前にこの価格で成約している、給湯器の交換に20万円かかる見込みがある。こうした具体的な材料があると、売主も検討のテーブルに乗せてくれます。金額だけを削る交渉は、単に買う気が薄い人と受け取られてしまい、他に申込みが入ったときに後回しにされる原因になります。
購入申込書そのものには、売買契約のような法的拘束力はありません。契約が成立するのは、売買契約書を締結した時点です。ただ、安易に出して簡単に撤回する方は、次に良い物件が出たときに情報が回ってこなくなります。ここは信用の世界です。私も、真剣に検討されている方には、公開前の段階でお声がけすることがあります。
そして意外と効くのが、金額以外の条件です。引渡し時期を売主の希望に合わせる、残置物の撤去を求めない、設備の不具合は現状のまま引き受ける。売主にとって手間のかからない買主であることは、100万円の指値より価値を持つ場面が珍しくありません。住宅ローンの事前審査を済ませて資金計画を明確にしておくことも、同じ意味で強い材料になります。
大阪市西区の状況を申し上げますと、靭本町・京町堀は住環境の評価が安定しており、売主が強気を保ちやすいエリアです。南堀江・新町はデザイン性の高い物件が多く、個性が合う買主が現れると価格が動きにくくなります。阿波座は複数路線が使える利便性から住み替え需要が厚く、築年数の幅が広いぶん、物件ごとの事情の差が大きいのが特徴です。同じ西区でも、街と築年数の組み合わせによって交渉の余地はまったく違ってきます。
よくある質問(FAQ)
A. 一律にそうとは言えません。売り出し価格に値引き分をあらかじめ上乗せしている物件もあれば、相場をふまえて最初から実勢に近い価格をつけている物件もあります。後者に1割の指値を入れても、検討の対象にすらならないことがあります。割合ではなく、売主の事情と成約事例から金額の根拠を組み立てるほうが、結果として通りやすくなります。
A. 根拠のある金額を、丁寧な形で伝えるのであれば、心証が悪くなることはあまりありません。問題になりやすいのは、根拠のない大幅な指値を繰り返したり、一度合意した内容を後から覆したりする進め方です。申込みの前に担当者と金額の根拠をすり合わせておくと、売主側にも意図が伝わりやすくなります。
A. 購入申込書の段階では売買契約は成立していませんので、撤回は可能とされるのが一般的です。ただし売主側は他の検討者への案内を止めていることもあり、信頼関係には影響します。売買契約の締結後は、手付解除や違約金など契約内容に応じた取り扱いになりますので、条件は契約書と重要事項説明書でご確認ください。個別の判断が必要な場合は、担当者や専門家にご相談ください。
株式会社クレアクロスは大阪市西区で賃貸・売買・収益・管理をワンストップで扱う不動産会社です。中古マンションの購入前調査や価格交渉のご相談はもちろん、住み替えに伴う売却査定、収益物件の管理まで、まずはお気軽にご相談ください。