大阪市西区を拠点に、賃貸・売買・収益物件・管理までを一貫してお手伝いしています。契約から引渡しまでの実務を、現場の判断としてお伝えします。
この記事でわかること
・売買契約を結んでから引渡しを受けるまでの間に、台風などで建物が傷んだ場合、その損害を売主と買主のどちらが負担することになるのか
・民法536条と567条が定める危険の移転時期と、実際の売買契約書に置かれている危険負担条項との関係
・大阪市西区で契約から引渡しまでの期間に備えるために、契約前の段階で確認しておきたい具体的な項目
「契約は済んだので、あとは引渡しを待つだけですね」。売買契約の調印を終えた日、売主様にも買主様にも、そうお伝えすることがあります。ところが、その数日後に大阪へ台風が接近しました。大阪市西区で不動産仲介をしております、重村です。契約から引渡しまでの期間は、短ければ二週間、住宅ローンの手続きが挟まれば一か月以上になることもあります。この「空白の期間」に建物が傷んだとき、誰がその負担を引き受けるのか。実際に現場で起きた出来事をもとに、大阪市西区で売買を進める方に向けて整理しました。
契約から引渡しまでの「空白の期間」に起きること
不動産の売買は、契約の調印と代金の決済・引渡しが同じ日に行われるわけではありません。買主様が住宅ローンを利用される場合、金融機関の本審査と金銭消費貸借契約の手続きが必要になりますし、売主様側でも引越しや残置物の撤去、境界の確認といった準備があります。そのため、契約から引渡しまで二週間から一か月半ほどの期間が空くのが一般的です。
この期間、建物はまだ売主様の名義のままですが、買主様はすでに手付金を支払い、契約上の権利を持っています。所有権が移っていないのに、買う立場は確定している。この中間的な状態のときに建物が傷んだらどうなるのかという問題が、法律上の「危険負担」と呼ばれる論点です。
大阪市西区は木津川と道頓堀川、そして安治川に囲まれた地形で、靭本町や京町堀のあたりには築年数の経った戸建てや低層の建物も残っています。台風が大阪湾から北上してくる進路をとった年には、屋根材のずれや雨樋の破損といった被害のご相談が実際に増えます。八月から十月にかけて引渡しを予定されている取引では、他人事とは言いきれないお話です。
中古一戸建ての売買契約を締結し、引渡しを二週間後に控えたところで、大型の台風が大阪に接近しました。契約書の調印は終わり、買主様の住宅ローンも本承認が下りていた段階です。
決済前の現地確認に伺うと、屋根瓦の一部がずれ、二階の窓のサッシ周りから雨水が入った跡が残っていました。買主様からは、契約したときの状態と違うのではないかというお声をいただきました。当然のご不安だと思います。
まず売主様が加入されている火災保険で風災の補償が受けられるかを確認し、保険会社に現地調査と見積りを急いでいただきました。引渡し前の建物は売主様の保険の対象であり、この時点で動けるのは売主様側です。
売主様と買主様の双方から書面で合意をいただいたうえで引渡し日を一週間延期し、修理が完了してから、あらためて双方立会いのもと写真を残して状態を確認し、決済に進みました。あわせて買主様の火災保険の始期も、新しい引渡し日に合わせて調整をお願いしました。
引渡しの前と後で、負担する人が変わる理由
民法567条1項は、売主が買主に目的物を引き渡した後に、当事者双方の責めに帰することができない事由によってその物が滅失または損傷したときは、買主は代金の支払いを拒むことができないと定めています。台風や地震といった天災は、売主にも買主にも落ち度がない事由の典型ですので、引渡しを終えた後に起きた被害については、買主様が引き受けることになります。
裏を返すと、引渡しの「前」に起きた損傷は、この条文の対象外です。その場合は双務契約の原則に戻り、民法536条1項の考え方によって、引き渡す義務を負っている売主様の側がリスクを負うという整理になります。買主様は、傷んだままの状態での引渡しを受け入れず、代金の支払いを留保できる立場に立つ可能性があります。つまり、危険が移転する分かれ目は、契約の日ではなく引渡しの日だということです。
ただし、これはあくまで民法が定める原則です。実際の不動産売買契約書には「危険負担」という条項が置かれているのが通常で、そこで当事者の取り決めが優先されます。修復して引き渡すのか、修復が困難な場合に解除できるのか、修復費用がいくらを超えたら白紙に戻せるのか。条文の原則と契約書の定めの両方を見ないと、実際の結論は出ません。ご自身の契約書がどう書かれているかを確認されることをおすすめします。
| 場面 | 原則としての負担 | 買主が取りうる対応 |
|---|---|---|
| 引渡し前の天災による損傷 | 売主の負担になるのが原則(民法536条1項の考え方) | 修復を求める、代金の支払いを留保する、損傷が重大なら解除を検討する |
| 引渡し後の天災による損傷 | 買主の負担になる(民法567条1項) | 自身の火災保険で対応する。代金の支払いは拒めない |
| 引渡し前に売主の管理不足で悪化した損傷 | 売主に責めがあると評価される可能性がある | 修補や損害賠償を求める余地がある |
| 契約書に危険負担の特約がある場合 | 特約の定めが優先される | 条項に沿って修復・減額・解除のいずれかを協議する |
契約書の危険負担条項は、どこを読むか
危険負担の条項は、売買契約書のなかほどに置かれていることが多く、文量としては数行です。読むときに見ていただきたいのは三点あります。一つ目は、損傷が起きたときに売主が修復して引き渡す義務を負うと書かれているかどうか。二つ目は、修復が困難な場合や、修復費用が一定額を超えた場合に、どちらから契約を解除できると定めているか。三つ目は、解除したときに手付金がどう扱われるか、違約金が発生しない形で白紙に戻るのかどうかです。
この三点が明記されていれば、実際に被害が出たときの話し合いは早く進みます。逆に、条項が抽象的で「協議のうえ定める」としか書かれていない場合は、被害が出てから交渉が始まることになり、引渡し日の延期や資金計画の組み直しで双方に負担がかかります。契約前の段階でご担当者に確認しておく価値のある部分です。
あわせて、売主様には引渡しまで火災保険を解約しないこと、買主様には保険の始期を引渡し日に合わせることをお伝えしています。引渡し日が延期になったときに、売主様の保険がすでに切れていて、買主様の保険はまだ始まっていないという空白が生まれると、どちらの保険も使えない事態になりかねません。日付の調整は地味ですが、実務では効いてきます。
大阪市西区で契約前に確認しておきたいこと
西区の靭本町や京町堀、阿波座のあたりは、オフィスと住宅が混在し、間口の狭い敷地に建つ戸建てや、築年数の経った低層マンションも少なくありません。隣地との距離が近い分、屋根材の飛散や外壁の損傷が隣家に及ぶと、話が当事者二人では収まらなくなります。引渡し前の建物であっても、周囲への影響が出たときにどう動くかは、売主様と事前に確認しておきたい点です。
また、南堀江や新町のように川沿いに近いエリアでは、台風時の高潮や内水氾濫のハザード情報を、契約前の重要事項説明で確認しておくことに意味があります。水害ハザードマップの説明は宅地建物取引業法上の説明事項とされており、取引の場で必ず触れられる項目です。引渡し後のリスクは買主様が引き受けることになりますので、その前提を知ったうえで判断していただくためのものです。
契約を結ぶ際に、ご担当者へ「引渡し前に物件が傷んだらどうなりますか」と一度聞いてみてください。条文と契約書の両方を見て答えが返ってくるか、あるいは一般論で流されるか。その答え方には、その担当者が契約書のどこを見て仕事をしているかが表れます。私自身、この質問をしていただけると、こちらの準備も引き締まります。
この会社に頼んでいいのか、と思われたら
対応している分野、これまでの事例、相談の流れを公式サイトに載せています。読んでから判断していただいて構いませんし、合わないと感じたら、それで構いません。
株式会社クレアクロス 公式サイト
よくあるご質問
Q. 引渡し前に台風で建物が傷んだ場合、契約を白紙に戻せますか。
A. 契約書の危険負担条項の定め方によります。修復が困難な場合や修復費用が一定額を超える場合に解除できると定められていれば、その条項に沿って進めることになります。定めがない場合でも、損傷の程度が大きく契約の目的を達成できないと評価される状況であれば、解除を検討できる可能性があります。まずは条項の確認からお願いしています。
Q. 修理費用は売主と買主のどちらが出すことになりますか。
A. 引渡し前の天災による損傷であれば、原則として売主側の負担として整理されます。実務では売主様の火災保険で風災の補償を受けられるかを先に確認し、保険金で修復できる範囲かどうかを見てから、引渡し日の調整を含めた協議に入ることが多いです。保険の適用可否は保険会社の判断になりますので、早めの連絡が結果を左右します。
Q. 引渡し日を延期する場合、どのような手続きが必要ですか。
A. 売主様と買主様の双方が書面で合意する形をとります。口頭の了解だけで進めると、後日の認識違いにつながりやすいためです。あわせて、住宅ローンの融資実行日、登記の手続き日、火災保険の始期、売主様の転居先の日程などを同時に動かす必要がありますので、関係先への連絡を一つずつ進めていくことになります。
契約から引渡しまでのご不安、お聞かせください
大阪市西区を中心に、売買・賃貸・収益物件・管理までご相談をお受けしています。契約書の危険負担条項の読み方や、引渡し日の調整についても、実務に沿ってお答えします。
関連情報
危険負担の考え方は民法536条および567条に定められています。条文はe-Gov法令検索で確認できます。水害ハザードマップは大阪市の公表資料をご覧ください。