- 境界があいまいな土地でも売却できるのか、何が変わるのか
- 公簿売買と実測売買のちがいと、どちらを選ぶかの考え方
- 確定測量にかかるおおよその期間・費用と、進まなくなる典型パターン
- 越境しているブロック塀や庇を、壊さずに整理する「覚書」の使い方
- 売ると決める前に、今日からできる三つの確認
「隣との境目がどこなのか、実ははっきり分かっていないんです」。大阪市西区で売却のご相談をお受けしていると、これは決して珍しい話ではありません。塀がどちらのものか分からない、境界標が見当たらない、昔から何となくこの線でやってきた。住宅が密集した市街地ほど、よくあることです。結論から言えば、境界があいまいでも売ること自体はできます。ただし、売れる価格・売れるまでの期間・売った後に残る責任は、ここで大きく変わります。リフォームや査定価格の比較より前に、まず足元を確かめていただきたい部分です。
境界があいまいでも売れる。ただし「価格・期間・責任」が動く
境界が未確定だからといって、売買契約そのものが禁じられているわけではありません。現に、境界標のない土地が市場で取引されることはあります。問題は、そのリスクを誰が引き受けるかという一点に集約されます。
買主の立場に立ってみてください。境界が確定していない土地を買うということは、「引渡し後に隣地の方と話し合う仕事」が付いてきた状態で受け取るということです。建て替えの基礎の位置、駐車場のライン、フェンスのやり直し。どれも数センチの差でもめる余地が残ります。だから多くの買主は、確定測量を契約の条件に出すか、そのリスクを差し引いた金額でしか手を挙げません。値引きの理由が価格交渉ではなく境界にある、というケースは実際にあります。
大阪市西区のように土地の単価が高く、一区画あたりの面積が小さいエリアでは、この影響がとりわけ大きく出ます。靭本町や京町堀のように間口の狭い敷地が連続する街並みでは、わずか数十センチの不明確さが、間取りの成立可否そのものを左右することがあるためです。
公簿売買と実測売買、どちらで売るか
土地の売買には、登記簿に記載された面積をそのまま前提として取引する公簿売買と、測量した実際の面積で金額を精算する実測売買があります。登記簿の面積は、明治期の地租改正までさかのぼる古い測量が元になっている土地も少なくありません。実測すると差が出ることがあり、狭い土地ほど、わずかな差が総額に跳ね返ります。
どちらが正解と言い切れるものではありません。西区の戸建てや小規模な土地では、確定測量を済ませてから売りに出したほうが結果的に手取りが増える場面が多い一方、隣地の事情で測量が進まないと判断した時点で、公簿売買に切り替えて早く動くほうが合理的なこともあります。
確定測量は「自分だけ」では終わらない
ここが最も誤解されやすい点です。確定測量は、土地家屋調査士に依頼すれば自分のペースで完了する手続きではありません。隣地の所有者に現地へ立ち会っていただき、境界の位置に納得のうえで筆界確認書に署名・押印をいただいて、はじめて形になります。つまり、相手のある手続きです。
目安として、民民の境界だけでも一〜三か月、官民境界の明示が加わるとさらに数か月を要することも珍しくありません。費用も数十万円規模になるのが一般的で、土地の形状や隣地の件数によって幅があります。売却を決めてから動くと、この期間がそのまま「売れない時間」になります。売ろうかどうか迷っている段階で測量の見積りだけ取っておく。それだけで、後の選択肢がかなり広がります。
なお、どうしても隣地と折り合わない場合には、法務局の筆界特定制度という公的な手続きもあります。とはいえ争いにまで発展すれば土地家屋調査士や弁護士の領域です。まずは、もめる前の確認として動くことをおすすめします。
越境物は「なくす」より「書面にする」
境界と一緒に必ず出てくるのが越境の問題です。隣のブロック塀がこちら側に数センチ入っている、屋根の庇が出ている、樹木の枝が伸びてきている。これらは、その場で壊したり切ったりして解決する話ではありません。
実務でよく使うのが越境の覚書です。現状の越境を互いに確認したうえで、「将来、建て替えや取り壊しを行う際には是正する」という内容を書面にしておく。買主にとっては、状況が可視化され、次の世代に引き継がれる形になっていることが安心材料になります。壊さずに整理する、という発想です。
樹木の枝については、令和五年四月施行の改正民法により、隣地の所有者に切除するよう催告しても相当の期間内に応じない場合などには、こちら側で切り取ることができるようになりました。ただし、いきなり切ってよいわけではなく、順番があります。根はもともと自分で切ることができますが、いずれにせよご近所関係が続くことを考えれば、一言添えるに越したことはありません。
売ると決める前に、今日からできる三つの確認
売却の準備というと、リフォームや掃除、査定価格の比較に目が向きがちです。けれど、土地に関して本当に時間がかかるのは境界です。次の三つは、売ると決める前でもできます。
一つめ、境界標が現地にあるかを、実際に歩いて見てみること。コンクリート杭、金属プレート、鋲など形はさまざまで、植栽や自転車の陰に隠れていることもあります。二つめ、過去の測量図や筆界確認書が家のどこかに残っていないか探すこと。過去に建替えや相続の手続きをしていれば、書類一式が残っている可能性があります。三つめ、隣地の所有者と、今も連絡が取れる状態かを確認すること。
特に三つめは、時間が経つほど難しくなります。隣にお住まいだったご高齢の方がお元気なうちであれば立会いをお願いできたのに、というのは、現場で何度も見てきた場面です。新町や南堀江のように、住み替えや相続で所有者が入れ替わりやすい地域ほど、この差は大きく出ます。
境界そのものの確定は土地家屋調査士、争いになれば弁護士の領域です。私たち不動産会社の役割は、今の状態で売るといくらぐらいになりそうか、測量をしてから売るとどう変わりそうかを、良いことも悪いことも含めて正直にお伝えすることだと考えています。
査定額の根拠、売却にかかる費用、引渡しまでの流れを公式サイトでご案内しています。