大阪市西区を拠点に、賃貸・売買・収益・管理までを一貫して取り扱っています。住宅ローンの滞納のご相談では、弁護士の先生と並行して動く場面が少なくありません。どの手続きを選ぶかの判断は弁護士の領域ですが、「いくらで、いつまでに売れるか」という部分は私たち不動産会社がお伝えできるところだと考えています。
この記事でわかること
- 破産手続開始決定が出ると、自宅を売る主体がご本人から破産管財人に移ること(破産法78条)
- 申立ての前に任意売却を済ませる場合に求められる、適正な価格と公平な返済という二つの条件
- 安すぎる売却や特定の債権者への先払いが、否認や免責不許可につながりうる理由(破産法160条・162条・252条)
- 弁護士と不動産会社が同じ日程表で動くと、競売の開札日までの使い方がどう変わるか
破産手続が始まると、家を売るのはご本人ではなく管財人になります
はじめに、いちばん大きな違いをお伝えします。自己破産の申立てをして破産手続開始決定が出ると、ご自宅などの財産を管理し処分する権限は、裁判所が選ぶ破産管財人に移ります(破産法78条)。ご本人の名義であっても、ご本人が売主として契約を結ぶことはできなくなります。
開始決定のあとも、競売ではなく任意売却という形で売ること自体は可能です。ただし売主は管財人です。売却価格をいくらに設定するか、引渡しの時期をいつにするか、引越し費用を売却代金から出せるかといった判断は管財人が中心になり、売却代金の一部は破産財団に組み入れられるのが一般的です。ご本人の「この時期までに次の住まいへ移りたい」というご希望が、そのまま通るとは限らなくなります。
もうひとつ、費用の面でも違いが出ます。ご自宅を持ったまま申し立てると、処分すべき財産があるとして管財事件として扱われ、裁判所に納める予納金の負担が増えることがあります。反対に、先に売却を済ませて手元に目立った財産が残っていなければ、より簡易な手続きで進む余地があります。もっとも、この扱いは裁判所の運用や個別の事情で変わりますので、必ず弁護士にご確認ください。ここでお伝えしたいのは、家を持ったまま申し立てるか、売ってから申し立てるかで、手続きの重さが変わりうるという点だけです。
順番を決める前に、確かめておきたい四つのこと
ご相談の場で、私が弁護士の先生との間を行き来しながら順番に確かめている四つです。これが揃うと、先に売るか、申立てを先にするかの見通しが立ちます。
受任通知を出した段階か、申立書の準備に入っているか、すでに申立てを済ませているかで、選べる順番が変わります。申立てがまだなら、売却を先に進める余地があります。すでに開始決定が出ているなら、窓口は管財人です。「弁護士に相談中」という段階でご連絡いただけると、いちばん選択肢が広く残っています。
滞納が続くと、債権者は期限の利益を喪失させたうえで競売を申し立てます。裁判所から競売開始決定の通知が届いていれば、開札日という動かせない期限ができます。任意売却は開札日の前日までに決済を終える必要がありますので、ここが決まっていると逆算の起点になります。通知の封筒は捨てずに、日付の分かるものをお持ちください。
売却代金で住宅ローンを完済できるのか、足りないのかで話が変わります。足りない場合は債権者の同意を得た配分案が必要になり、その調整に時間がかかります。大阪市西区のマンションは築年数や住戸の向きで価格帯が分かれますので、まず現在の相場をお出しして、残債務との差額を数字にしてから順番を考えます。
売ることが前提でない場合もあります。住宅ローン特則付きの個人再生なら、住宅ローンは従来どおり払い続けながら他の債務を整理し、自宅を手元に残す道があります。売るか残すかで手続きそのものが変わりますので、ここは最初に確かめます。どの手続きが使えるかの判断は弁護士にご相談ください。
申立ての前に売るなら、適正な価格と公平な返済が条件です
では、先に任意売却を済ませておけばよいのか。手続きを軽くできる場合はありますが、ここには外せない条件があります。守られていないと、後からその売買が取り消されたり、免責が認められない理由になったりするおそれがあります。
ひとつめは、価格です。相場より明らかに安い価格で売ると、破産法160条以下の否認の対象になりえます。特に気をつけたいのが、ご親族や知人への売却です。「身内に買ってもらって住み続けたい」というお気持ちは自然なものですが、第三者に売る場合の価格と比べて安ければ、財産を不当に減らしたと見られかねません。親族間の売買そのものが禁じられているわけではなく、価格の根拠を説明できるかどうかが分かれ目になります。
ふたつめは、代金の配り方です。売却代金は債権者の同意を得た配分案に沿って支払い、手元に残したり隠したりしないことが前提になります。ここで起きやすいのが、家族や知人から借りていたお金だけを先に返してしまうことです。特定の債権者にだけ弁済する行為は偏頗弁済として破産法162条の否認の対象になりえますし、財産を隠す行為は破産法252条の免責不許可事由にあたる可能性があります。せっかく売却を終えても、免責が得られなければ出直しになってしまいます。
だからこそ、任意売却では記録を残すことを大切にしています。査定をどういう根拠で出したのか、どの媒体に出してどれだけ反響があったのか、内見が何件入っていくらの申込みが来たのか。この販売経過が残っていれば、「適正な価格で売れました」と説明ができます。逆に、水面下で一社だけに声をかけて決めた取引は、後で説明に困ります。手続きの先を見据えるなら、堂々と売ることがいちばん安全だと考えています。
弁護士と不動産会社が、同じ日程表で動くということ
以前、大阪市内のマンションにお住まいの方から、弁護士の先生へご依頼されたのと同じ時期にご相談をいただきました。まず弁護士の先生と直接ご連絡を取り合い、「売却を先に進め、決済が終わってから申立てをする」という順番を確認しました。
そのうえで、ばらばらに動きがちな三つの予定をひとつの表にまとめました。債権者との配分案の交渉、次の住まい探しと引越しの時期、そして申立ての準備です。競売の開札日から逆算して、売買契約をいつまでに結ぶ必要があるか、決済をいつに置くかを先に決め、そこに弁護士の先生の準備を合わせていただきました。結果として、開札の前に売却を終え、落ち着いて新しい生活の準備に入ることができました。
この進め方で何が変わるかというと、待ち時間が消えます。弁護士の先生は「売却の見通しが立たないと申立ての時期を決めにくい」、不動産会社は「破産の方針が決まらないと債権者と話を詰めにくい」。お互いが相手の結論を待っていると、期限だけが近づいてきます。日程表を共有すると、この待ち合いがなくなります。私たちから弁護士の先生へ、査定書と販売状況の報告書をそのままお渡しできるようにしているのも、同じ理由です。
なお、順番とは別に押さえておきたいことが二つあります。自己破産をしても連帯保証人の債務はなくなりません。ご実家のご家族が保証人になっているケースでは、そのご家族への請求が残ります。もうひとつ、税金や社会保険料などは免責されない債権です(破産法253条)。差押えが入っている場合の進め方は、関連記事で別に整理しています。
大阪市西区での進め方と、売却にかかる期間の見込み
順番を考えるときに、いちばん具体的な材料になるのが「売るとしたら、どれくらいの期間がかかるか」です。西区のマンションであれば、販売を始めてから決済まで、短い場合で二か月前後、債権者との調整が重なると三か月から四か月というのが実感です。申立ての時期を決めるには、この期間を先に見積もる必要があります。
エリアによる差もあります。靭本町と京町堀は本町・肥後橋・阿波座が徒歩圏に入り、靭公園沿いの住環境を評価される方と通勤重視の方が混ざるため、動きが比較的早い傾向です。新町は西大橋・四ツ橋が近く、心斎橋まで歩けることが効きます。南堀江は四ツ橋・桜川が近く、立花通りの商業地と住宅が隣り合う構成です。阿波座は中央線と千日前線が使えて乗り換えの自由度が高い反面、中央大通や阪神高速の高架に面する住戸は同じ築年数でも評価が分かれます。どのブロックのお住まいかで、見込み期間が一か月単位で変わってきます。
それから、管理費や修繕積立金の滞納が重なっている場合は、管理組合との精算も決済に組み込むことになります。買主への開示も必要です。この論点は関連記事で詳しく扱っていますので、滞納がある方はあわせてご覧ください。
最後に、役割の整理です。自己破産がよいのか個人再生がよいのか、免責が見込めるのかという判断は弁護士の領域です。私たち不動産会社がお役に立てるのは、ご自宅がいくらで、いつまでに売れるかをお伝えし、その数字を弁護士の先生の日程に乗せることです。順番に正解があるわけではなく、どう組み合わせるかという話だと考えています。ひとりで抱え込まず、迷っている段階でお声がけください。
よくあるご質問
Q. もう弁護士に依頼して申立ての準備に入っていますが、今から任意売却はできますか。
開始決定が出る前であれば、ご本人が売主として進められる可能性があります。ただし申立ての時期と売却の段取りがぶつかりますので、まず弁護士の先生に「売却を先に進めてよいか」をご確認いただき、了解が得られた段階で日程をすり合わせるのが安全です。すでに開始決定が出ている場合は、窓口が管財人になりますので、そちらの指示に従うことになります。
Q. 親に買ってもらって、そのまま住み続けることはできますか。
制度として禁じられてはいませんが、価格と資金の出どころの説明が必要になります。相場より安い価格だと否認の対象になりえますし、ご親族が住宅ローンを組む場合は、同居のご家族からの購入という形を金融機関が扱わないことも多いです。実行するかどうかの判断は弁護士の先生と相談しながら、価格の根拠は私たちが査定と販売経過でお示しする、という分担になります。
Q. 売却しても借金が残ります。それでも先に売る意味はありますか。
意味はあると考えています。競売より高い価格で売れる可能性があること、引渡しの時期をご自身の都合に近づけられること、配分案のなかで引越し費用が認められる余地があることが主な理由です。残った債務の扱いは手続きのなかで整理されますので、残るかどうかではなく、どう売るかで比べていただくのがよいと思います。
靭本町・京町堀・南堀江・新町・阿波座を中心に、住宅ローンの滞納から任意売却・住み替えまでお手伝いしています。売却後に残った借金の整理は任意売却で残った借金の返し方、間に合う期限の逆算は任意売却はいつまで可能か、管理費の滞納がある場合は管理費滞納と任意売却で整理しています。