大阪市西区を拠点に、賃貸・売買・収益物件・賃貸管理の仲介に携わっています。貸している家の売却では、売主さまのご事情と入居者さまの暮らしの両方に目を配ることを大切にしています。
この記事でわかること
- 普通借家と定期借家で、契約の終わらせ方がどう違うか
- 退去を待つ場合にかかる時間とお金の内訳
- 入居者付きのまま売る(オーナーチェンジ)ときの価格の決まり方
- 居住用財産の3,000万円特別控除の「3年の期限」との関係
- 大阪市西区で売り方を決めるまでの進め方
大阪市西区での実績
売り方は「賃貸借契約の種類」から逆算する
最初に見ていただきたいのは、査定書ではなく賃貸借契約書です。入居者さまとの契約が普通借家契約か定期借家契約かで、売却スケジュールの立て方がまったく変わります。
普通借家契約の場合、貸主から契約を終わらせるには、期間満了の1年前から6か月前までのあいだに更新しない旨の通知をすることに加えて、正当事由が必要です(借地借家法26条・28条)。ここでいう正当事由は、貸主と借主それぞれが建物を使う必要性、これまでの経過、建物の現況などを総合して判断されます。「家を売りたいから」という貸主側の事情だけでは、正当事由として認められにくいのが実情です。立退料の提供は正当事由を補う事情として考慮されますが、それだけで足りると決まっているわけではありません。
一方、定期借家契約なら期間満了で契約が終了し、更新はありません(借地借家法38条)。ただし期間が1年以上の契約では、満了の1年前から6か月前までのあいだに「期間満了で終了します」という通知をしておかないと、終了を入居者さまに主張できません。通知のタイミングを逃していないか、まずご確認ください。なお契約書の表題が「定期借家契約書」でも、契約前に別紙の事前説明書面が交付されていなければ、定期借家として扱われない場合があります。契約書と一緒に、その書面の控えも探してみてください。
西区では、靭本町や京町堀のファミリー向け分譲マンションを転勤のあいだだけ貸しているケースと、南堀江や阿波座の投資用ワンルームをそのまま保有しているケースの両方をよく見ます。前者は普通借家で貸してしまっていることが多く、後者は定期借家や投資向けの契約が選ばれていることが多い、という傾向があります。
退去を待つ場合に積み上がる時間とお金
空室にしてから売れば、買主の候補は「自分で住みたい方」まで広がり、価格は上がりやすくなります。その代わり、売主さまが負担するものが増えます。見落とされがちなのは次の4つです。
合意で退去していただく方法は可能ですが、金額も時期も話し合い次第です。引越費用と新居の初期費用に相当する額が目安として語られることはありますが、相場として決まった数字はありません。交渉が長引けば売却の着手も後ろにずれます。
家賃が止まったあとも、住宅ローンの返済、管理費と修繕積立金、固定資産税は続きます。退去から売買の決済までの数か月分を、あらかじめ月額で出しておくと判断がぶれません。
退去立会いで負担区分を整理し、必要な範囲でクリーニングや補修を行います。長く貸していた部屋は、設備の年式が古くなっている分、買主の目に留まりやすくなります。
退去時に預かっている敷金を精算します。入居者付きのまま売る場合と違い、ここで売主さまの手元から出ていく資金になります。
入居者付きで売るとき、買主が見ているもの
入居者さまに住んでいただいたまま売ることもできます。建物の引渡しを受けて住んでいる入居者さまの賃貸借は新しい所有者に引き継がれ、敷金の返還義務も買主に移ります(借地借家法31条、民法605条の2)。入居者さまの暮らしを動かさずに売れるのが、この方法のいちばんの利点です。
ただし買主は、自分で住みたい方ではなく投資目的の方が中心になります。見られるのは室内の好みではなく、家賃収入から見た利回りです。賃貸借契約書、直近の入金記録、敷金の額、更新時期、滞納の有無がそのまま査定材料になりますので、管理会社から資料をそろえておくと話が早く進みます。前の所有者が受け取った敷金は、決済のときに買主へ引き継ぐ精算をします。
以前ご相談いただいた大阪市内の3LDKの分譲マンションでは、普通借家で入居中のまま売る場合と、更新のタイミングで入居者さまと話し合い、ご納得のうえで退去後に売る場合の両方で査定を出しました。そこから立退料と空室期間のローン・管理費の負担を差し引いて並べたところ、最終的に売主さまは「入居者さんに無理をお願いしない」オーナーチェンジを選ばれました。数字を並べて比べると、迷いはかなり整理されます。
| 比べる点 | 退去後に売る | 入居者付きで売る |
|---|---|---|
| 買主の層 | 自分で住む方+投資家 | 投資目的の方が中心 |
| 価格の決まり方 | 周辺の成約事例が中心 | 家賃から見た利回りが中心 |
| 時期の読みやすさ | 交渉次第で読みにくい | 退去を待たず動ける |
| 売主の出費 | 立退料・空室期間の費用・原状回復 | 敷金は買主へ引継ぎ、原状回復は不要 |
| 入居者への影響 | 引越しをお願いすることになる | 暮らしはそのまま続く |
| 室内の確認 | 買主が内見できる | 室内は見られない前提で進む |
税金の期限は、退去交渉より先に確かめる
もともとご自身が住んでいた家であれば、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の対象になる可能性があります。この特例は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件の一つです。そのあいだに賃貸に出していた期間があっても、期限内の売却であれば対象になり得ます。
ここが、退去を待つかどうかの判断に直接はね返ります。立退きの交渉に1年、空室期間と売却活動に半年と見ていくと、気づいたときには期限を過ぎていることがあります。期限内に決済まで終えられる見込みなのかを先に置いてから、売り方を決める順番にしてください。あわせて、所有期間が5年を超えるかどうかで税率の区分も変わりますので、取得の日付も控えておくと検討が早くなります。
特例にはほかにも要件があり、適用の可否は個別の事情で変わります。私たちは税務の判断をする立場ではありませんので、具体的な適用は税理士や所轄の税務署にご確認ください。期限から逆算したスケジュールづくりは、売却の側からお手伝いできます。
西区で売り方を決めるまでの手順
順番を決めておくと、入居者さまに余計な不安を与えずに検討が進みます。実際のご相談では、おおむね次のように進めています。まず賃貸借契約書と事前説明書面、直近の家賃入金記録、敷金の額、管理委託契約の内容を集めます。次に入居中と空室の両方で査定を出し、立退料の見込みと空室期間の月額負担を差し引いた手残りを並べます。そのうえで税金の期限を重ね、どちらが無理のない売り方かを決めます。
入居者さまへお伝えするのは、売り方が決まってからで構いません。オーナーチェンジで進めるなら、貸主が変わることと新しい振込先を決済後に通知すれば足りますので、入居者さまの生活に手を入れずに済みます。退去をお願いする方向であれば、更新時期に合わせて管理会社を通じて丁寧にご相談するのが順序です。西区は靭本町・新町・南堀江・京町堀・阿波座でそれぞれ賃料の水準と買主の層が違いますので、エリアごとの成約事例と募集賃料を見てから数字を置くようにしています。
よくあるご質問
Q. 入居者さんに知らせずに売りに出しても問題ありませんか
A. 入居者さまの同意は売買の要件ではありませんので、オーナーチェンジであれば先にお知らせしなくても進められます。ただし室内の内見をお願いする場合や、退去のご相談をする場合は事前のご連絡が必要です。決済後は、貸主が変わったことと家賃の振込先を書面で通知します。
Q. 入居者付きだと、どのくらい価格が下がりますか
A. 一律の下げ幅はありません。家賃が相場より高めで安定していれば差は小さく、相場より低い家賃で長く入居されている場合は差が開きやすい、という関係になります。実際の数字は、入居中と空室の2通りで査定を出して比べるのが確実です。
Q. 定期借家なら、満了まで待てば必ず空室で売れますか
A. 期間1年以上の契約では、満了の1年前から6か月前までの通知をしていることが前提です。この通知を逃すと終了を主張できません。また満了後に入居者さまが住み続け、貸主がそれを受け入れている状態が続くと、関係が整理しづらくなる可能性があります。満了日が近い場合は通知の時期から確認してください。
賃貸借契約書をお手元に、一度並べてみませんか
入居中と空室の2通りで査定を出し、立退料と空室期間の負担、税金の期限まで並べてご説明します。売ると決める前の段階でのご相談でも構いません。大阪市西区の不動産仲介・株式会社クレアクロスが承ります。
あわせて読みたい記事
同じオーナーチェンジを、入居者さまの側から書いた記事です。本記事が売主さまの判断、こちらが入居者さまの権利という役割分担になっています。
こちらも「どの状態で売りに出すか」を費用と期間から比べる話です。戸建てを売る場合の判断材料としてお読みください。