大阪市西区を拠点に、賃貸・売買・収益・管理までを一貫して取り扱っています。一棟マンションやアパートの売買では、売主様側・買主様側の双方で資料の精査を担当してきました。数字の見栄えではなく、根拠となる書面から判断することを大切にしています。
この記事でわかること
- レントロールを賃貸借契約書と突き合わせるときに、どの項目をどの順で確認するのか
- 預かり敷金・保証金が買主に引き継がれる仕組みと、決済時に精算額を検算する方法
- 滞納・契約形態・更新時期から「その家賃が続くかどうか」を判断する具体的な視点
レントロールは、契約書と突き合わせて初めて「資料」になる
まず前提として押さえていただきたいのが、レントロール(家賃一覧表)は売主様側が作成した表であって、それ自体に法的な裏付けがあるわけではないということです。売買の実務でレントロールが添付されるのは慣行にすぎず、宅地建物取引業法が定める重要事項説明の項目として、各戸の賃料を証明することまでが求められているわけではありません。数字の根拠は、あくまで一戸ごとの賃貸借契約書にあります。
ですから、収益物件の検討を本格化させる段階で仲介会社を通じて請求していただきたいのは、次の書面です。全戸分の賃貸借契約書の写し、入居時の覚書や特約がある場合はその書面、家賃保証会社との保証委託契約書、そして直近12か月分の入金明細(送金明細や管理会社の収支報告書)。このうち入金明細は、表に書かれた金額が実際に振り込まれているかを裏づける唯一の資料ですので、省略しないでいただきたい部分です。
照合するときは、部屋番号ごとに賃料・共益費・駐車場代を分けて並べてください。レントロールでは共益費を賃料に含めて大きく見せている表もありますし、駐車場代が別契約になっていて、入居者の退去とは関係なく解約される場合もあります。合計額が合っていても、内訳の性質が違えば、買った後の収入の安定度は変わります。
「満室」の中身を見分ける、三つの視点
満室という状態は、それ自体が良い条件のように見えます。しかし売却を前提に短期間で埋めた満室と、数年かけて安定している満室とでは、買った後の景色がまるで違います。私が資料を預かったときに真っ先に見るのは、次の三点です。
全戸の契約日を古い順に並べてみてください。直近3か月から半年に集中しているようなら、売却に合わせて埋めた可能性を検討したほうが安全です。条件を緩めて短期間で埋めた部屋は、最初の更新を迎える前に退去が出ることも珍しくありません。契約日と入居日がずれている場合は、その理由も確認しておきたいところです。
たとえば家賃6万円の部屋を、3か月フリーレント付きで6万5000円として契約すれば、レントロール上の年額は上がります。ところが初年度の実収入は、その分だけ目減りします。仲介会社へ支払う広告料を増やして家賃を維持しているケースも同じで、募集コストが表に出てきません。特約欄と、募集時の条件が分かる書面まで見せていただくのが確実です。
契約者名が売主様と同じ姓である、売主様の法人名義になっている、といった部屋は、退去の時期が読みにくくなります。決済後まもなく退去となれば、その分の家賃は初年度から抜け落ちます。契約者と所有者の関係は、聞かなければ資料に表れません。遠慮なく確認してよい事項です。
預かり敷金は買主が返す。決済時の精算額は必ず検算する
オーナーが変わっても、入居者との賃貸借契約はそのまま買主に引き継がれます。民法605条の2は、賃貸物件が譲渡されたときに賃貸人たる地位も移転すると定めており、あわせて敷金を返す義務も新しいオーナーに移ります。前のオーナーが受け取った敷金であっても、退去時に返すのは買主です。
そのため実務では、決済の場で預かり敷金の合計額を売買代金から差し引いて調整するのが一般的です。ここで気をつけたいのが、大阪では従来から保証金・敷引きの慣行があり、古い契約ほど預かり額や返還条件がまちまちだという点です。保証金20万円のうち敷引き10万円、という契約と、敷金2か月で全額返還、という契約が同じ建物に混在していることもあります。
ですから、部屋ごとの預かり額と返還条件を一覧でいただいたうえで、精算書の金額をご自身で足し算して確かめてください。敷引き特約がある部屋を全額精算の扱いにしてしまうと、買主が多く受け取りすぎることになりますし、その逆であれば返還時に自己資金を出すことになります。数分の検算で防げる差額です。
その家賃は「続く家賃」か。滞納・契約形態・更新時期で見る
家賃がいくらかということと同じくらい、その家賃がきちんと払われ続けるかどうかが大切です。判断材料になるのは主に四つあります。
ひとつ目は直近の入金状況です。滞納がある部屋については、金額だけでなく何か月続いているかを確認してください。保証会社が立て替えている状態と、入居者本人からの入金が止まっている状態とでは、対応の難しさが違います。ふたつ目は契約形態です。定期借家であれば、借地借家法38条により期間の満了とともに契約は終了します。更新される前提で収支を組むと見込みが狂いますので、期間満了日と再契約の取り決めを一覧にしておくのが確実です。
三つ目は更新時期の集中です。同じ月に更新が5件並んでいれば、その月に退去が重なる可能性もその分高くなります。原状回復費と募集費用が一度に発生する月が分かっていれば、資金の準備ができます。四つ目は家賃保証会社の加入状況で、加入の有無に加えて、保証の範囲と、オーナー変更後も契約が引き継がれるかどうかまで確認しておきたいところです。会社によっては、所有者が変わった時点で手続きが必要になります。
これらは、重要事項説明や売買契約の前に、仲介会社を通じて売主様へ照会できる内容です。「資料にないので分かりません」で終わらせず、書面での回答を求めていただくことをおすすめします。回答に時間がかかる物件は、それ自体が管理状態を示す情報でもあります。
大阪市西区のエリア別に見る、家賃の持続性の読み方
同じ西区でも、街ごとに入居者層が違うため、家賃が続くかどうかの読み方も変わります。靭本町・京町堀は職住近接を求める単身者や、落ち着いた環境を選ぶご夫婦の需要が安定している一方、築年数を重ねた小規模マンションでは設備更新が家賃維持の条件になっている物件が目立ちます。設備の更新履歴が家賃の根拠になっているケースです。
南堀江・新町は単身向け住戸が多く、入退去の回転そのものが速いエリアです。回転が速いこと自体は悪いことではありませんが、募集条件を緩めた直後のレントロールは実力より高く見えます。近隣の募集中物件の条件と並べて、いま同じ家賃で埋め直せるかを確かめておくと判断が安定します。阿波座は地下鉄3路線が使える利便性から底堅い需要がありますが、事業所の社宅利用が混ざることがあり、その場合は法人の都合で一斉に退去が生じる可能性を見ておく必要があります。
なお、購入後の賃料設定や税務上の取り扱いについては、個別の事情によって結論が変わります。税額の計算や申告は税理士、契約の有効性に関する法律判断は弁護士がそれぞれ専門となりますので、必要に応じて各専門家と連携しながら進めるのが安全です。
その物件、10年後に売れるか一緒に検証します
表面利回りではなく、保守的な稼働率と修繕費を入れた数字で見直します。融資が付く築年数か、次に買う人がいるエリアか、売るときに何が障害になるか。賃貸管理と売買の両方を見てきた立場からお伝えします。すでに所有している物件のご相談も承ります。
マイソクや概要書の写真で結構です。お名前や詳しいご事情は後からで構いません。
株式会社クレアクロス(大阪市西区靱本町・本町駅徒歩1分)
よくあるご質問
Q. 賃貸借契約書を全戸分見せてほしいと頼むのは、失礼にあたりませんか。
収益物件の売買では通常の確認事項ですので、失礼にはあたりません。個人情報の関係で契約者名を伏せた形で提示される場合もありますが、賃料・共益費・契約期間・特約といった収支に直結する部分は確認できるのが一般的です。提示を断られる場合は、その理由を書面で残しておくと、後の判断材料になります。
Q. フリーレント付きの部屋があると、その物件は買わないほうがよいのでしょうか。
フリーレント自体は一般的な募集手法ですので、あることが問題なのではありません。問題になるのは、その分を織り込まずに利回りを計算してしまうことです。無償期間が終わった後の実質賃料に引き直して収支を作り直し、それでも成り立つかどうかで判断していただくのが現実的です。
Q. 決済のときに敷金を精算すれば、退去時にもう費用はかかりませんか。
精算されるのは預かり金の引き継ぎ部分だけです。退去時には原状回復費のうち貸主負担となる部分や、次の入居者を募集する費用が別に発生します。敷金の精算と退去コストは別のものとして、それぞれ見積もっておく必要があります。
靭本町・京町堀・南堀江・新町・阿波座を中心に、一棟マンション・アパート、区分のオーナーチェンジ物件の売買と管理をお手伝いしています。購入前の資料精査から、購入後の賃料設定・入居者対応まで続けてご相談いただけます。