大阪市西区を拠点に、賃貸・売買・収益・管理までを一貫して取り扱っています。自社でも日々広告を出す立場ですので、ポータルサイトの掲載基準や公正競争規約の表記ルールは、実務として向き合っている部分です。広告は会社がお客さまに最初に差し出す「顔」です。ここを雑に扱う会社とは、その後の条件交渉や契約の説明も丁寧にはならない、というのが正直な実感です。
この記事でわかること
- 「おとり広告」が宅地建物取引業法と公正競争規約のどこで、どう禁じられているのか
- 来店する前の電話やメールで確認できる、三つの質問と答え方の違い
- 徒歩分数・「新築」・専有面積など、広告の表記ルールの読み方
- 大阪市西区で最寄り駅の取り方によって徒歩分数が変わる理由と、現地での確かめ方
おとり広告は、法律と自主ルールの両方で禁じられている
まず法律の側です。宅地建物取引業法32条は、宅地建物取引業者が広告をするときに、物件の所在や規模、形質、現在もしくは将来の利用の制限や環境、交通その他の利便、代金や借賃の額などについて、著しく事実に相違する表示や、実際のものより著しく優良・有利であると人を誤認させるような表示をすることを禁じています。いわゆる誇大広告の禁止です。違反すれば監督処分の対象となり、罰則の定めも置かれています。注意したいのは、この条文は「誤認させるおそれ」の段階を問題にしているという点です。実際に契約に至ったかどうかとは別に、表示そのものが問われます。
もう一つが、業界の自主ルールである「不動産の表示に関する公正競争規約」です。景品表示法に基づく認定を受けた規約で、各地域の不動産公正取引協議会が運用しています。ここでは次の三つを、おとり広告として明確に禁じています。
- そもそも存在しない物件の広告
- 物件は存在するが、すでに成約済みなどで実際には取引の対象になり得ない物件の広告
- 物件は存在するが、はじめから取引する意思のない物件の広告
三つ目があることが大切なところです。「部屋は実在するし空室でもあるけれど、案内する気はない」という広告も、ルール上は認められません。そして二つ目があることで、成約済みの物件を掲載したままにしておくことも規約違反になり得ます。各ポータルサイトも掲載基準を厳しくし、協議会も違反事例への措置を公表していますが、ゼロにはなっていないのが実情です。
賃貸でも売買でも、考え方は同じです。お部屋探しの場面で遭遇しやすいのは、相場より明らかに安い家賃の住戸が、長い期間にわたって掲載され続けているケースです。
来店の前に、電話かメールで聞いておきたい三つのこと
おとり広告を見抜く一番の方法は、足を運ぶ前に確かめることです。質問そのものよりも、その質問にどう答えるかに会社の姿勢が出ます。
成約済みかどうかを確かめる、もっとも直接的な質問です。誠実な会社なら、元付の管理会社や売主側に空室状況を確認して回答できます。あわせて「それはいつ時点の情報ですか」まで聞いておくと、掲載の鮮度が分かります。「現地でお伝えします」「とりあえずご来店ください」と話をずらされる場合は、いったん保留でよいと思います。
広告で建物名を出していないことはありますが、お問い合わせをいただいた方に来店前にお伝えできない理由は、本来そう多くありません。所在地が分かれば、ご自身で地図を見て周辺環境や駅までの道のりを確かめられます。ここを伏せたまま来店だけを求める運用には、他社で先に見られることを避けたい意図が働いている場合があります。
管理費・共益費、更新料、保証会社の初回保証料と年間費用、鍵交換代、室内消毒などの名目で、初期費用は大きく変わります。来店前に合計の目安を出せるかどうかに、その会社の見積りの誠実さが表れます。なお宅地建物取引業法34条では、広告をするときに取引態様(売主・代理・媒介)の別を明示することが求められています。広告にその記載が見つからない場合も、確認してよい点です。
徒歩分数や「新築」には、決められた書き方がある
公正競争規約には、広告の表記についての細かい基準も定められています。知っておくと数字の見え方が変わる代表的なものを挙げます。
徒歩所要時間は、道路距離80メートルにつき1分として算出し、1分未満の端数は切り上げます。つまり「徒歩5分」は、道路距離で320メートルを超え400メートル以下という意味です。信号待ちや坂道、歩道橋の上り下り、駅構内の移動は加味されていません。実際に歩けば表示より長くかかることは、ルールに違反していなくても普通に起こります。
「新築」と表示できるのは、建築工事の完了後1年未満で、かつ人が住んだことのない物件に限られます。1年を過ぎれば、どれだけきれいな建物でも新築とは書けません。「築浅」という言い方には明確な基準がないため、築年数そのものを確認してください。
「完全」「完璧」「絶対」「日本一」「格安」「激安」といった用語は特定用語の使用基準として扱われ、客観的な根拠を示す資料がなければ使えません。根拠を示せる状態で使っている会社は、聞けばその根拠を説明できます。
面積の表示も見ておきたい部分です。マンションの専有面積は、広告では壁芯(壁の中心線で囲んだ面積)で書かれることが多く、登記簿上の内法(壁の内側)面積より大きくなります。住宅ローン控除の床面積要件のように内法で判断される制度があるため、購入の場面では両方の数字を押さえておくほうが安全です。
大阪市西区は「最寄り駅の取り方」で徒歩分数が変わる
西区でお部屋探しや物件探しをされる方に、いつもお伝えしていることがあります。このエリアは駅が密集しているため、同じ住戸でも広告に載る最寄り駅と徒歩分数の組み合わせが、会社によって変わるのです。
例を挙げます。靭本町のあたりは本町駅・阿波座駅・肥後橋駅が徒歩圏に入り、京町堀は肥後橋駅と阿波座駅、新町は西大橋駅と四ツ橋駅、南堀江は四ツ橋駅と桜川駅がそれぞれ候補になります。どの駅を最寄りとして書くかで、見た目の分数は数分動きます。阿波座駅は地下鉄中央線と千日前線が使えて乗り換えの自由度が高い一方、ホームから地上に出るまでの距離がある駅でもあり、改札を出てからの体感と道路距離の計算は一致しません。
ですから分数の比較は、同じ駅を基準にそろえて行ってください。そのうえで、気になる住戸は実際に駅から歩いてみることをおすすめしています。先日も「駅徒歩5分」と表示された物件をご案内する前に地図で測り、信号の多い道を通ると7〜8分かかると分かったケースがありました。規約どおりの表示であっても、通勤の体感は別物です。
西区は中央大通や阪神高速の高架が通る一方で、堀江や新町のように生活道路が静かなブロックもあります。昼と夜、平日と休日で雰囲気が変わる場所もありますので、可能なら時間帯を変えて歩いてみてください。広告では分からない部分が、ここでいちばん大きく出ます。
それでも判断が難しいときの、現実的な進め方
「この広告は怪しいのでは」と感じたとき、確かめ方は一つではありません。
まず、同じ住戸が複数の会社の広告に出ているかを見てください。賃貸でも売買でも、流通している物件は複数の窓口から広告が出ます。一社だけが長い期間、相場より安い条件で出し続けている場合は、内容を確認する価値があります。
次に、会社そのものを調べる方法があります。免許証番号は広告に表示されているのが原則で、国土交通省が公開している宅建業者等の企業情報検索や、各都道府県の宅地建物取引業者名簿で、免許の有効性や過去の監督処分を確認できます。大阪府知事免許の業者であれば、大阪府の担当窓口で名簿の閲覧ができます。この調べ方は別の記事で詳しく整理していますので、下の関連記事からご覧ください。
広告の内容そのものに疑いがあるときは、地域の不動産公正取引協議会に情報提供の窓口があります。近畿圏であれば近畿地区不動産公正取引協議会です。消費者からの申し出をもとに調査が行われる仕組みになっています。
最後に一つ。おとり広告を疑うべき場面と、単に情報の更新が遅れている場面は、外から見分けがつきにくいものです。悪意のない掲載漏れも実際にあります。ですから私は、一度の出来事で決めつけるのではなく、聞いたことに来店前にきちんと答えてもらえるかどうかという一点を目安にすることをおすすめしています。そこで答えてもらえる会社なら、その後の条件交渉や契約の説明も、同じ姿勢で進むはずです。
なお、広告表示が法令や規約に違反するかどうかの最終的な判断は、行政庁や協議会の領域です。個別の契約の有効性や損害の問題は弁護士の領域になります。不動産会社としてできるのは、確認すべき点を具体的にお示しし、必要なときに適切な窓口へおつなぎすることだと考えています。
よくあるご質問
Q. 問い合わせたら「決まりました」と言われました。これはおとり広告なのでしょうか。
それだけでは判断できません。人気の住戸が数時間で決まることは実際にあります。見るべきはその後の対応です。成約済みと分かった時点で掲載を取り下げるか、いつ時点の情報だったかを説明してもらえるかどうか。数週間後に同じ住戸がまだ同じ条件で掲載されているなら、そのときは確認してよい状態だと思います。
Q. 建物名や所在地を「ご来店後にお伝えします」と言われるのは、普通のことですか。
売買では、売主のご事情で建物名や詳しい所在地を広告に出さない運用があり、これ自体は珍しくありません。ただ、お問い合わせをいただいた方に、守秘が必要な理由を説明したうえで個別にお伝えすることはできます。理由の説明もなく来店だけを求められる場合は、来店させること自体が目的になっていないか、立ち止まってよい場面です。
Q. 徒歩分数が表示より長くかかりました。これは広告違反になりますか。
表示が道路距離80メートル1分で正しく計算されているなら、ルール上の違反には当たらないのが一般的です。信号待ちや坂道、駅構内の移動時間は計算に含まれません。ですので「違反かどうか」ではなく、「自分の通勤時間として何分なのか」を実際に歩いて確かめる、という受け止め方をおすすめしています。
靭本町・京町堀・南堀江・新町・阿波座を中心に、お部屋探しから中古マンションの購入、収益物件までお手伝いしています。会社の評判をどこまで参考にしていいかについては、不動産会社の口コミはどこまで信じていい?で正直に整理しています。