大阪市西区を拠点に、賃貸・売買・収益・管理までを一貫して取り扱っています。売却のご相談では、他社より低い査定額をお出しして、一度はお仕事をいただけなかったこともあります。それでも根拠のない数字は出さない、という線は守ってきました。査定書は契約をいただくための道具ではなく、売り出し価格を一緒に決めるための資料だと考えています。
この記事でわかること
- 査定額が「その金額で売れる約束」ではなく、根拠の明示が義務づけられた意見であること
- 宅地建物取引業法34条の2第2項が求める「価額の意見の根拠」を、受け取った側がどう確かめるか
- 相場より高い価格で売り出した3か月に何が起きるのか、時間が費用に変わる仕組み
- 大阪市西区で成約事例を読むときに、同じ区内でも分けて考えたいエリアと建物の違い
査定額は「売れる値段」ではなく、根拠を示す義務のある意見です
はじめに法律の定めを確認します。宅地建物取引業法34条の2第1項は、媒介契約を結ぶときに書面を作成して交付することを定めています。そして同条第2項では、宅地建物取引業者が売買すべき価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定められています。つまり査定額は、法律上「意見」として扱われ、根拠の説明が義務づけられている数字です。「この金額で売れます」という保証ではありません。
根拠として示されるのは、ふつう次のような資料です。近隣の成約事例(実際に売買が成立した価格)、同じマンション内の過去の取引、現在売り出し中の競合物件の価格と掲載期間、路線価や公示価格、そして対象住戸の個別事情(階数、方位、角住戸かどうか、リフォームの状況、管理の状態など)。このうち最も重みを持つのは成約事例です。売り出し価格には売主の希望が入りますが、成約価格は買主が実際に出した金額だからです。
ここで一つ、知っておいていただきたいことがあります。査定の出し方には幅があり、同じ住戸でも会社によって数字が変わるのは、それ自体はおかしなことではありません。問題になるのは、その幅の理由を説明できないときです。他社より300万円高いのなら、その300万円はどの事例から来ているのか。それに答えられる会社と、答えられない会社があります。
相場より高い価格で売り出した3か月に、何が起きるか
媒介契約の有効期間は、専任媒介契約と専属専任媒介契約では3か月が上限と定められています(宅地建物取引業法34条の2第3項)。更新はできますが、いずれにしても3か月というまとまった時間を一社に預けることになります。
相場より高い価格で売り出すと、この3か月の使い方が変わります。買主はポータルサイトで価格帯を区切って検索します。高い設定だと、そもそも検索結果に入らないか、入っても同じ価格帯のより広い住戸や新しい建物と並べられ、比較の段階で候補から外れます。反響が出ないので内覧が入らず、内覧が入らないので買主の反応という情報も手に入りません。価格を見直す判断材料そのものが集まらない、という状態になります。
そして時間が経つと、掲載期間そのものが情報になります。ポータルサイトには掲載からの日数が分かる表示があり、価格の変更履歴が残るサイトもあります。「長く出ているのに決まらない物件」という見え方がつくと、今度は相場で出しても「何か理由があるのでは」と思われ、結果として相場より下げないと決まらない、ということが起こります。
住み替えの場合は、時間そのものが費用に変わります。購入を先にする段取りなら、つなぎ融資やダブルローンの期間が延びます。売却を先にする段取りなら、仮住まいと二度の引越しが視野に入ります。お子さまの学校の区切りや転勤の時期が絡むと、選べる選択肢が減っていきます。3か月は、思っているより短い時間です。
査定書を受け取ったら、確かめておきたい四つのこと
ここからは、査定書を受け取った側ができることです。質問そのものよりも、その質問にどう答えるかに会社の姿勢が表れます。
成約事例は、不動産会社がレインズ(指定流通機構)などで確認できる情報です。所在、専有面積、階数、成約時期、成約価格を一覧で出してもらってください。見るべきは件数ではなく近さです。同じマンション、同じ築年帯、同じ面積帯の事例がどれだけ入っているか。「市内の平均」のような大きな括りだけで組まれた査定は、根拠としては弱いと考えてよいと思います。
査定額は一点の数字で出てきますが、実務では「このあたりまでは挑戦できる」「ここを下回ると手残りが変わる」という幅があります。上限と下限を分けて聞くと、その会社がどこを現実的な着地点と見ているかが分かります。高い数字だけを強調して幅を示さない場合は、もう一度聞いてみてください。あわせて仲介手数料や抵当権抹消の費用を引いた手取りの概算も出してもらうと、判断しやすくなります。
これを契約の前に決めておくと、売却の進め方が変わります。たとえば「3週間で問い合わせが一定の件数に届かなければ、この幅で見直す」という目安を共有しておく。あとから値下げの相談を受けると、売主側はどうしても追い込まれた気持ちになりますが、最初に決めてあれば予定どおりの作業になります。見直しの幅は、近隣の競合物件がどの価格帯に並んでいるかで決まります。
専任媒介契約では2週間に1回以上、専属専任媒介契約では1週間に1回以上、業務の処理状況を報告することが法律で義務づけられています。回数ではなく中身を確認してください。問い合わせ件数、内覧件数、内覧された方の反応、他社からの問い合わせの有無。この四つが毎回入っていれば、価格を見直すかどうかの判断材料になります。
大阪市西区は、同じ区内でも成約事例の読み方が分かれます
西区で査定をお出しするとき、私が気をつけているのは「西区の平均」でまとめないことです。同じ区内でも、価格の動き方が違うブロックがあります。
靭本町と京町堀は、本町・肥後橋・阿波座が徒歩圏に入るビジネス街寄りのエリアで、単身や二人世帯向けの住戸と、靭公園沿いの落ち着いた住環境を評価する層が混ざります。新町は西大橋・四ツ橋が近く、心斎橋まで歩ける距離が効きます。南堀江は四ツ橋・桜川が近く、立花通りの商業と住宅が隣り合う構成です。阿波座は地下鉄中央線と千日前線が使えて乗り換えの自由度が高い一方、中央大通や阪神高速の高架に面する住戸は、同じ築年数でも評価が分かれます。
ですから成約事例は、できるだけ同じブロック、同じ通り沿い、できれば同じマンション内のものを見せてもらってください。西区は大規模なタワーマンションと、30戸前後の中規模マンションが混在しています。戸数が多い建物は過去の取引が多いので事例が取りやすく、戸数の少ない建物は事例が薄くなります。事例が薄いときにどう補ったのかを説明できるかも、見ておきたいところです。
管理の状態も、同じ築年帯の中で差が出る部分です。長期修繕計画が更新されているか、修繕積立金の残高が計画に見合っているか、大規模修繕をいつ実施したか。これらは買主の住宅ローン審査や値引き交渉に直接つながるので、査定の段階でまったく触れていない場合は、確認しておくほうが安全です。
それでも迷うときの、現実的な進め方
まず、査定は複数社から取ってかまいません。そのうえで、金額の順に並べるのではなく、根拠の資料の厚さで並べ直してみてください。いちばん高い会社が、いちばん近い事例を揃えていることもあります。その場合は、高い査定にもきちんと理由があるということです。
次に、すでに媒介契約を結んでいる場合でも、見直す道はあります。専任媒介契約の有効期間は3か月が上限ですから、少なくともその区切りでは選び直せます。期間の途中でも、報告が来ない、約束した広告が出ていないといった事情があれば、相談の余地はあります。この点は別の記事で整理していますので、下の関連情報からご覧ください。
最後にもう一度。査定額が高いこと自体は悪いことではありません。根拠があって高いのなら、それは挑戦する価値のある数字です。気をつけたいのは、根拠を聞いても答えが返ってこないまま、その数字を前提に住み替えの計画を組んでしまうことです。査定書を受け取ったら、金額の下にある資料を見せてもらってください。そこで丁寧に答えてくれる会社なら、売却の途中で迷ったときにも、同じ姿勢で相談に乗ってくれる可能性が高いと思います。
なお、譲渡所得税の計算や確定申告は税理士、相続や共有をめぐる権利関係の争いは弁護士、登記は司法書士の領域になります。不動産会社としてできるのは、価格の根拠を具体的にお示しし、必要なときに適切な専門家へおつなぎすることだと考えています。
よくあるご質問
Q. 3社の査定額が300万円以上ばらつきました。どれを信じればよいのでしょうか。
金額ではなく、添付された成約事例を比べてください。同じマンション内や同じ通り沿いの事例が入っているか、専有面積と階数が近いか。近い事例で組まれた査定が、いちばん現実に近い数字です。差の理由を聞いたときに、事例を指しながら説明できるかどうかが分かれ目になります。
Q. 高い査定額を出した会社と契約して、売れなかったらどうなりますか。
専任媒介契約の有効期間は3か月が上限ですので、その区切りで会社を選び直すことはできます。ただ、その3か月のあいだに掲載期間と価格の変更履歴が残り、住み替えの予定にも影響します。契約の前に「いつ、どれだけ見直すか」を書面やメールで共有しておくと、この3か月の使い方が変わります。
Q. 査定額の根拠を聞くのは、失礼にあたりませんか。
まったく失礼ではありません。宅地建物取引業法34条の2第2項で、価額について意見を述べるときは根拠を明らかにしなければならないと定められています。もともと聞かれる前提の数字です。むしろ聞いていただいたほうが、こちらも資料を整えてお話ししやすくなります。
靭本町・京町堀・南堀江・新町・阿波座を中心に、中古マンションの売却から住み替え、収益物件までお手伝いしています。媒介契約を結んだあとの見直しについては、媒介契約は途中で変えられる?で整理しています。