重村 裕一
(株式会社クレアクロス 代表取締役/宅地建物取引士)
大阪市西区を中心に、賃貸・売買・収益物件・管理のご相談をお受けしています。借地権付きマンションの売買や、借地契約書と管理組合資料の読み合わせも同じ窓口でお聞きしています。
この記事でわかること
- 借地権マンションが相場より安くなる仕組みと、安さの中身の違い
- 旧法借地権・普通借地権・定期借地権で将来がどう変わるか
- 地代・解体準備金・譲渡承諾料を含めた総額の比べ方
- 住宅ローンの借入期間と、将来売るときに必要になる手続き
- 大阪市西区で内覧の段階に出してもらう資料と確認の順番
大阪市西区での実績
11年
不動産実務
西区中心
賃貸・売買・管理
1つの窓口
調査から引渡しまで
同じエリア・同じ広さなのに、相場より2〜3割ほど安い中古マンション。広告をよく見ると「借地権」と書かれている——大阪市西区でもときどきある話です。借地権付きマンションは、お部屋(建物)は自分のものですが、土地は地主さんから借りている権利を使わせてもらう形です。仕組みを理解したうえで選べば決して悪い選択ではありませんが、所有権のマンションとは確認すべき箇所がはっきり違います。この記事では、内覧の段階でどの資料を出してもらい、何をどう比べれば判断できるのかを、順番に整理しました。
借地権マンションが相場より安い理由
価格が安いのは、値引きされているからでも、何か隠れた欠陥があるからでもありません。買う対象に土地の所有権が含まれていないからです。所有権のマンションは、専有部分(お部屋)と敷地利用権(土地の持分)をセットで取得します。借地権マンションは専有部分は取得しますが、土地については、分譲時に地主から借りた権利を区分所有者全員で使わせてもらう形になります。土地の価格が売買代金に乗らないぶん安くなり、そのかわり毎月の地代が発生する。ここを押さえておくと、あとの判断はかなり楽になります。
西区で言えば、靭本町や京町堀のように土地の評価が高いエリアでは、所有権との価格差がはっきり出ます。同じ予算で広さや立地を一段上げられるのが借地権の最大の利点です。新町や南堀江のように分譲マンションの供給が多い場所でも、借地権物件だけは価格帯がひとつ下に並ぶことがあります。
ただし、安さの理由が「期間が決まっているから」なのか「地代を払い続けるから」なのかは物件ごとに違い、将来の資産価値への影響もまったく別物になります。同じ「借地権」という表示でも中身は一本道ではない、という前提で見てください。
権利の種類と残存期間を最初に数字で確認する
最初に確認するのは借地権の種類です。ここを押さえないまま他の条件を比べても、判断の土台が定まりません。旧法借地権(平成4年8月1日より前に設定されたもの)と、現在の借地借家法による普通借地権は、期間が満了しても地主側に正当な事由がなければ更新されるのが原則です。長く住み続けられる一方、契約に更新料の取り決めが置かれている場合があります。
これに対して定期借地権(借地借家法22条など)は、期間が満了すると更新がなく、原則として建物を解体して土地を返す仕組みです。一般定期借地権なら期間は50年以上で設定されますが、分譲から20年、30年が経っていれば、残っているのはその差し引き分です。残存期間が短くなるほど、売るときの価格も下がっていきます。
「築20年で残り30年・更新なし」と「築20年だが更新の見込みがある」は、同じ価格でも将来像が違います。広告の「借地権」の一言で判断せず、借地契約書で種類・設定日・期間・残存年数を数字で確認してください。パンフレットや販売図面の記載だけで済ませず、契約書の原本の写しを求めるのが確実です。
借地契約書の写し
借地権の種類、設定日、期間、残存年数、更新や再契約の定めを確認します。定期借地権なら満了年月を西暦で押さえ、ご自身の年齢と並べて考えます。
地代と解体準備金の金額
管理費・修繕積立金と別建てか、合算で請求されるのかを確認します。定期借地権では期間満了時の解体費用を積み立てる項目が入ることがあります。
譲渡承諾料・更新料の取り決め
金額の決め方(定額か価格に対する割合か)と、売主買主どちらが負担する慣行になっているかを確認します。将来ご自身が売るときにも同じ手続きが必要です。
管理規約と重要事項調査報告書
地代の改定履歴、管理組合が地主と結んでいる取り決め、滞納の有無を確認します。管理会社に発行を依頼する書類なので、早めに動くほど余裕が生まれます。
| 比べる点 | 旧法・普通借地権 | 定期借地権 | 所有権 |
|---|---|---|---|
| 期間満了後 | 正当な事由がなければ更新が原則 | 更新なし・建物を解体して返す | 期間の概念がない |
| 毎月の負担 | 管理費・修繕積立金+地代 | 管理費・修繕積立金+地代+解体準備金の例も | 管理費・修繕積立金 |
| 土地の固定資産税 | 地主の負担 | 地主の負担 | 所有者の負担 |
| 住宅ローン | 取扱いが金融機関で分かれる | 残存期間に合わせて借入期間が制限される例も | 最長期間で組みやすい |
| 売るときの手続き | 賃借権なら地主の承諾が必要 | 承諾に加え残存期間が価格に影響 | 第三者の承諾は不要 |
毎月と将来の費用を所有権物件と総額で比べる
借地権マンションでは、管理費・修繕積立金に加えて、地代(土地の賃料。管理組合を通じて毎月徴収されるケースが多い)、定期借地権なら解体準備金、売却や相続のときの譲渡承諾料(名義書換料)、更新がある契約なら更新料がかかることがあります。借地権が賃借権の場合、売買には地主さんの承諾が必要です(民法612条)。マンションでは借地契約や管理規約で手続きが定められていることが多いのですが、承諾料の有無や金額は物件ごとに異なります。
一方で、土地の固定資産税・都市計画税は地主さんの負担になるため、毎年の税負担は建物分だけで済みます。ここは借地権のはっきりした利点です。つまり「安い価格+毎月の地代」と「高い価格+土地の固定資産税」を、同じ物差しで並べる作業が必要になります。
比べ方は単純です。住むつもりの年数を決め、その年数分の返済額・管理費・修繕積立金・地代・解体準備金・固定資産税を合計し、所有権物件の同じ合計と並べる。そのうえで、定期借地権なら満了時に建物の価値がゼロになる前提も織り込んでおきます。月々の数千円の差は、30年では大きな額になります。感覚ではなく、紙に書いた数字で比べてください。
住宅ローンと出口の条件を内覧の段階で確かめる
借地権マンションは、金融機関によって住宅ローンの取り扱い条件が異なります。定期借地権の場合は、残存期間に合わせて借入期間が制限されることもあります。借入期間が短くなれば毎月の返済額は上がるので、価格の安さが相殺されてしまうこともあります。物件を決める前に、その物件で借りられるかを事前審査で確かめておくと安心です。金融機関には借地権の種類と残存期間を先に伝えてください。
以前、大阪市内で築25年の借地権マンションを検討されたご夫婦がいらっしゃいました。価格は周辺の所有権マンションの7割ほどで、とても魅力的に見えました。ところが借地契約を確認すると定期借地権で、残存期間は約30年。お二人の年齢を考えると、老後の住まいとしては期間が足りない計算でした。地代と解体準備金を含めた月々の支払いも出してみたところ、「それなら少し予算を上げて所有権の物件を」という結論になりました。
逆に、旧法借地権で更新の見込みがあり、地代も手頃な物件なら、都心の好立地に手の届く価格で住めるという大きな利点があります。判断が分かれるのは物件の良し悪しではなく、その期間とご自身の暮らし方が合うかどうかです。権利の種類や内容は重要事項説明(宅地建物取引業法35条)で説明される事項ですが、契約直前では検討する時間がありません。内覧の段階で、借地契約書・地代・残存期間・承諾料の取り決めを不動産会社に出してもらいましょう。
大阪市西区で借地権物件を検討するときの進め方
西区は靭本町・京町堀・新町・南堀江・阿波座と、徒歩圏で性格の違うエリアが並ぶ街です。借地権物件は、土地の評価が高い場所にまとまって出てくる傾向があり、所有権との価格差が実感しやすい一方で、供給自体が少ないため比較対象を見つけにくいという面もあります。だからこそ、気になる物件が出たときに資料をそろえる速さが結果を左右します。
順番としては、内覧の申込みと同時に借地契約書・管理規約・重要事項調査報告書の取り寄せを依頼し、地代と解体準備金の実額を確認したうえで、その数字を持って事前審査に出す。ここまでを購入申込みの前に終えておくと、重要事項説明の場で初めて条件を知って慌てる事態を避けられます。資料が出てこない、種類がはっきりしないという段階で急かされるようなら、一度立ち止まって構いません。
当社は賃貸から売買、管理まで同じ窓口でお聞きしているので、「この地代は西区の相場としてどうか」「将来貸す選択はあるのか」といった角度からも一緒に考えられます。借地権は怖い権利ではなく、条件がはっきりしている権利です。中身を数字で見てから決めれば、十分に選択肢に入ります。
よくあるご質問
Q. 借地権マンションは売りにくいのでしょうか。
所有権の物件と比べると買主の母数は小さくなります。賃借権なら地主さんの承諾が必要になり、定期借地権なら残存期間が価格に反映されます。ただし、価格が相場に対して整っていて、借地契約書や承諾の手続きが明確になっている物件は動きます。買うときに資料をそろえておくことが、売るときの準備にもなります。
Q. 地代が値上げされることはありますか。
借地借家法11条には、土地の価格や公租公課の変動などを理由に地代の増減を請求できる定めがあります。契約に改定の方法が書かれている場合もあります。過去に改定があったかどうかは、管理組合の資料や重要事項調査報告書から確認できることがありますので、購入前に履歴を見ておくと見通しが立てやすくなります。
Q. 住宅ローン控除は使えますか。
住宅ローン控除は建物の床面積や築年数などの要件で判断され、土地が借地かどうかで一律に使えなくなるものではありません。ただし借入期間が10年未満になると対象から外れるため、定期借地権で期間が短く設定された場合は注意が必要です。適用の可否は最終的に税務署や税理士にご確認ください。
「この物件、借地権ってどういうこと?」の段階からどうぞ
借地契約書の読み方、地代を含めた総額の試算、事前審査の進め方まで、大阪市西区の中古マンションに絞ってお手伝いします。ご相談だけでも構いません。
関連情報
- 対応エリア:大阪市西区(靭本町・新町・南堀江・京町堀・阿波座ほか)
- 取り扱い:中古マンション・一戸建ての売買、賃貸、収益物件、管理
- 株式会社クレアクロス/宅地建物取引士 重村裕一