株式会社クレアクロス代表取締役。大阪市西区で賃貸・売買・収益・管理をワンストップで扱い、中古マンションの契約から引渡しまでの立会いに数多く携わってきました。
- 付帯設備表の「有・無」と不具合欄が、引渡し後の負担をどこで分けるのか
- 設備の修補を申し出られる期間が、建物本体の責任とは別枠で短く区切られる理由
- 売主が個人か宅建業者かで守られ方が変わる、宅地建物取引業法40条の考え方
- 残金決済の前の立会いで、どの順番に設備を動かして確かめるか
- 引渡し後に設備が動かなくなったとき、何日以内に、誰へ、どう伝えるか
- 大阪市西区(靭本町・新町・南堀江・京町堀・阿波座)の中古マンションで起きやすい設備の話
「エアコンをつけたら、冷えないんです。これって売主さんに直してもらえますか」。中古マンションをお引渡しした数日後に、こうしたお電話をいただくことがあります。答えは気持ちの良し悪しではなく、契約書と付帯設備表に何と書いてあるかで決まります。中古の住まいは、前にお住まいだった方の設備ごと引き継ぐ買い物です。だからこそ、契約前に見ておく書面と、決済前に動かしておく確認があります。
付帯設備表は「何が残り、何が動くか」の約束書
中古住宅の売買では、多くの場合、売主さまに付帯設備表という書面を作成していただきます。エアコン、給湯器、照明器具、ガスコンロ、浴室乾燥機、食器洗い乾燥機、網戸、物干し金具といった設備をひとつずつ並べ、「有」か「無」か、そして故障や不具合があるかどうかを記入していく書面です。売買契約書の本文には出てこない細かな部分が、ここに集まります。
ここで押さえていただきたいのは、「有」と書かれた設備だけが売買の対象になるという点です。内覧のときに壁に付いていたエアコンが、付帯設備表では「無(撤去)」になっていれば、引渡しのときには外されているのが原則です。「現地で見たから付いてくるはず」という思い込みは、残念ながら通りません。反対に、売主さまが置いていかれる家具や照明を引き継ぐのであれば、それは設備ではなく残置物として、どれを残しどれを処分するのかを書面に残しておく必要があります。
不具合欄の書き方も読みどころです。「有・不具合なし」と「有・不具合あり(=現状のままで引き渡す)」では、引渡し後の立場がまったく変わります。前者は動くものとして引き渡す約束であり、後者は壊れているものとして価格に織り込んだ合意です。私がお客さまと書面を読むときは、不具合ありと書かれた設備について、どの程度の症状なのかを売主さまへ確認し、その内容を書面の余白に書き添えていただくようお願いしています。言葉で聞いた話は、半年後には双方の記憶から消えてしまうからです。
もうひとつ、設備は「あるのに使えない」ことがあります。食器洗い乾燥機が据え付けられているけれど十年以上使っていない、床暖房の設備はあるが給湯器側のスイッチが入らない、といったケースです。こうした設備は、有無の欄だけを見ていると見落とします。契約前に、最後に使ったのはいつ頃かを聞いておくと、入居後の見通しが立てやすくなります。
設備の責任は、建物本体とは別枠で短く区切られる
中古住宅の売買では、引渡し後に見つかった不具合について売主が責任を負う、契約不適合責任という考え方があります。民法562条から564条が定める、修補や代金の減額、損害賠償や解除の請求です。ただし売主さまが個人の場合、建物本体と設備は、契約書のなかで別の扱いになっていることが一般的です。
よく見かける書き方は、設備については「引渡しから七日以内に買主から通知を受けた故障に限り、売主が修補する」あるいは「設備については責任を負わない」という特約です。建物本体の責任期間を三か月と定めつつ、設備だけは七日、という組み合わせも珍しくありません。設備は年数とともに必ず劣化し、いつ止まるかを誰も読めないため、個人の売主さまに長く負わせるのは現実的ではない。そうした事情から定着した実務です。
この短さは、買主さまの行動を変えます。七日という期間は、引渡しを受けて荷物を運び込み、荷ほどきをしているうちに過ぎてしまう長さです。冒頭のお客さまは、エアコンが付帯設備表で「有・不具合なし」、特約は引渡し後七日以内という内容でした。すぐにご連絡をいただけたので、売主さまに修理をご負担いただくことができました。もし一か月後のお電話だったなら、ご自身での修理になっていた可能性が高い。期間を知っているかどうかが、そのまま金額の差になって現れます。
ですから私は、鍵をお渡しするときに「入居したら、まず全部のスイッチと蛇口を触ってください」とお伝えしています。暖房の季節に引渡しを受けると、冷房はその年の夏まで試されないことがあります。使う予定のない設備こそ、引渡し直後に一度動かしておく価値があります。
決済前の立会いで、この順番に確かめる
書面を手に持ち、上から順に目で追って現物と突き合わせます。照明器具と網戸、カーテンレール、物干し金具は、見落とされやすく、入居後に買い足すと数万円の出費になります。逆に「無」のはずの家具や家電が残っていれば、処分の費用が買主さま側に回ってしまうため、その場で仲介会社へお伝えください。
エアコンは冷房と暖房の両方を入れ、風が出て温度が変わるところまで待ちます。給湯器は台所と浴室の両方でお湯を出し、追い焚きも押してみます。換気扇、浴室乾燥機、インターホン、コンロの点火も同じです。売主さまが退去後にライフラインを止めてしまうと確認ができなくなるため、立会いの日取りは、停止の前に決めておくのが肝心です。
バルコニーの物置や室外機の架台、ベランダの人工芝、押入れの棚板など、室内を歩くだけでは目に入らない場所が残ります。マンションではバルコニーが共用部分の専用使用部分にあたるため、置かれたものを引き継ぐ場合は、管理規約で認められる範囲かどうかも合わせて見ておきます。
給湯器の側面やエアコン室内機の側面には、製造年のシールが貼られています。十年を超えているものは、動いていても交換が近いと考えて資金の計画に入れておくほうが安全です。これは責任の話ではなく、住み始めてからの家計の話です。壊れてから慌てるのと、見込んでおくのとでは、選べる機種も工事の日取りも変わります。
売主が個人か宅建業者かで、守られ方が変わる
同じ「中古マンションの購入」でも、売主さまが個人の方なのか、買取再販を手がける宅建業者なのかで、買主さまの立場は変わります。売主が宅地建物取引業者で買主が業者でない場合、宅地建物取引業法40条により、契約不適合責任の通知期間を引渡しから二年以上とする特約を除いて、民法の規定より買主に不利となる特約は無効とされます。つまり、業者が売主の物件では、引渡し後二年という期間が下限として確保されるのが原則です。
| 確認項目 | 売主が個人の場合 | 売主が宅建業者の場合 |
|---|---|---|
| 責任期間の決まり方 | 契約書の特約が出発点になる | 宅建業法40条で下限が引かれる |
| よく見る期間の長さ | 建物は二〜三か月、設備は七日前後 | 引渡しから二年以上とされるのが原則 |
| 買主に不利な特約 | 合意すれば有効になりうる | 二年以上の定めを除き無効 |
| 設備の扱い | 設備のみ短期、または免責の特約が多い | 設備も保証の対象とする商品設計が多い |
| 引渡し前の設備交換 | 原則は現状のまま引き渡す | リフォーム済みで新品が入ることがある |
| 確認しておく書面 | 付帯設備表・告知書・特約条項 | 保証書・工事内容の説明・重要事項説明書 |
この違いは、価格の見え方にも関わります。リフォーム済みで設備が新しく、保証も付く物件は、その分が価格に乗っています。一方、個人の売主さまから現状で引き継ぐ物件は、価格は抑えられる代わりに、入居後の交換費用を自分の資金計画のなかに持つことになります。どちらが良いという話ではなく、ご自身がどちらの負担の形を選ぶのか、という選択です。重要事項説明の場では、売主が誰なのか、そして責任の期間が何日あるいは何年と書かれているのかを、必ず声に出して確かめていただきたいところです。
大阪市西区の中古マンションで、設備にまつわる事情
西区は街ごとに建物の年代が違うため、設備の話も一律にはなりません。靭本町や京町堀は、昭和の終わりから平成の初めに建った中規模のマンションが一定数残ります。給湯器がバルコニーの壁掛けではなく、玄関脇のパイプスペースに収まっている建物もあり、交換のときに同じ寸法の機種が選べるかどうかで費用が変わります。内覧の段階で、どこに給湯器があるかを見ておくと役に立ちます。
新町や南堀江は、単身や二人暮らし向けの住戸が多く、ガスコンロではなくIHが入っている住戸と、ガス配管だけが生きている住戸が混在します。コンロが付帯設備表で「無」になっている場合、ご自身で用意するものがIHなのかガスなのかは、分電盤の容量や配管の状況で決まります。買う前に確認しておかないと、入居初日に調理ができないことがあります。
阿波座から本町寄りの一帯は、事務所として使われてきた住戸が売りに出ることがあります。空調が家庭用のルームエアコンではなく天井埋込型という場合、動作の確認も交換の費用も、戸建てや一般の住戸とは勝手が違います。管理規約で室外機の設置場所が限られていることもあり、設備の入れ替えを前提に買われるなら、契約前に管理会社への確認をおすすめします。
そして西区全体に共通して申し上げたいのは、設備の不具合は売主さまを責める話ではない、ということです。長く住まわれた住まいには、必ず年数の跡が残ります。売主さまに悪意があったのではなく、書面に残っていなかっただけ、という場面がほとんどです。だからこそ、書面と立会いという二つの手間を、契約の前と決済の前に置いておく。それが双方にとって、いちばん穏やかな進め方だと考えています。
よくある質問(FAQ)
A. 特約の期間が七日以内であれば、修補を求める権利としては期間を過ぎています。ただし、まずは契約書の文言を正確に読み直してください。期間の起算日が引渡し日か翌日か、設備が特約の対象に含まれているか、通知の方法が書面に限られているかで結論が変わることがあります。また、売主さまが不具合を知りながら付帯設備表に記載しなかった事情があれば、別の議論になりえます。ご自身で判断される前に、仲介した会社へ時系列を整理してご相談ください。
A. 違います。「現時点で通常の使用ができる」という意味であり、新品の性能を約束するものではありません。十五年前のエアコンが冷えていれば不具合なしと書かれますし、それは適切な記載です。年数による劣化を見積もるのは買主さま側の仕事になりますので、製造年の確認をあわせて行ってください。
A. 延期が唯一の答えではありません。実務では、修補してから引き渡す、代金から相当額を減額する、現状のまま引き渡して付帯設備表の記載を改める、という三つの道のいずれかで調整することが多いです。住宅ローンの金銭消費貸借契約や引越しの日程が動くと費用が生じますので、どの方法が双方の負担を小さくできるかを、その場で仲介会社を交えて話し合うのが現実的です。
株式会社クレアクロスは大阪市西区で賃貸・売買・収益・管理をワンストップで扱っています。建物本体の不具合については中古マンションの契約不適合責任、売主側の引渡し準備については引渡しまでの売主の準備、賃貸でエアコンが壊れた場合については設備故障と家賃の減額で、それぞれ詳しく整理しています。内覧の段階からのご相談も歓迎です。