大阪市西区を拠点に、賃貸・売買・収益・管理まで幅広く手がける不動産のプロ。肩書きに頼らず、お客さま目線での「損をしない判断材料」をお伝えすることを大切にしています。
この記事でわかること
- 相続土地国庫帰属制度で引き取ってもらえない土地の条件と、却下と不承認という二段構えの仕組み
- 審査手数料・負担金に加えて、解体や測量で自己負担が生じる場面と、費用を見積もる順番
- 「売れない土地」と決めてしまう前に、大阪から遠方の土地でも確かめておきたい三つの出口
建物が建ったままでは、審査の土俵にすら上がれない
この制度で国に引き渡せるのは土地だけです。古い実家が残っている土地は、審査に入る前の「却下」という段階で止まります。まず解体して更地にしなければ、申請そのものが前に進みません。ここが最初の、そして最も多い誤解ポイントです。
制度の条文は、受け付けられない土地を二段階に分けています。ひとつは申請の時点で門前払いとなる却下事由で、建物がある土地のほか、抵当権などの担保権や地上権・賃借権といった使用収益権が設定されている土地、他人による使用が予定されている土地、特定有害物質による土壌汚染がある土地、そして境界が明らかでない土地や所有権の存否・帰属に争いがある土地が挙げられています。もうひとつは、審査を経たうえで引き取れないと判断される不承認事由で、管理に過分の費用や労力を要する崖地、放置車両や大きな樹木などの工作物が地上に残っている土地、除去が必要な地下埋設物がある土地、隣地所有者との争訟によらなければ管理できない土地などが含まれます。
整理すると、国が求めているのは「引き取ったあと、追加の手間やお金をかけずに管理できる状態の土地」です。売却のときに買主様が気にされる点と、実はよく似ています。境界があいまい、隣地と越境でもめている、庭木や物置がそのまま残っている——こうした状態は、市場でも国でも同じように敬遠されるとお考えいただくと、やるべき順番が見えてきます。
手放すためにも、まとまったお金が出ていく
国に引き取ってもらうこと自体が無料ではない、という点も押さえておきたいところです。申請時には審査手数料として土地1筆あたり14,000円が必要で、これは却下や不承認になっても返ってきません。承認された場合は、10年分の土地管理費用相当額にあたる負担金を納めます。原則は20万円ですが、市街化区域内などの宅地や一部の農地・森林は面積に応じて算定され、金額が上がることがあります。承認の通知を受けてから納付までの期限も定められており、納付したときに所有権が国に移ります。
実際にご相談をお受けした郊外の土地では、古家の解体と境界確定のための測量を合わせると数百万円規模の見込みになり、「それなら、売れる可能性をもう一度きちんと探ってみよう」という結論になったことがあります。制度の費用だけを見て判断すると、前提として必要になる解体費・測量費が抜け落ちてしまう。ここを含めて総額で比べることが、後悔しない検討の入り口だと考えています。
審査手数料と負担金は制度の入口と出口にかかる費用にすぎません。実務で効いてくるのは、その手前の解体費・残置物の処分費・測量費です。見積りは建物と土地で別々の業者に出してもらうことになるので、先に現地の写真と登記事項証明書・公図をそろえておくと話が早く進みます。
共有地は共有者全員による共同申請が求められます。兄弟姉妹で実家の土地を共有しているケースでは、誰か一人が決めて進められる話ではありません。しかも相続が重なるほど共有者は増えていきます。方針をそろえるなら、相続人の人数が少ないうちに話し合っておくほうが現実的です。
名義が亡くなった親のままでは、手放す手続きも売る手続きも始まりません。相続登記は2024年4月1日から義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が求められ、正当な理由なく怠ると過料の対象になり得ます。施行前に発生した相続にも適用されるため、「いつか考える」と置いてある土地ほど、まず名義の状態を確かめるところからです。
「売れない」と決める前に、市場に一度聞いてみる
国庫帰属は、売ることも譲ることもできなかったときの最終手段と位置づけるのがよいと考えています。というのも、ご本人が「こんな土地、誰も買わない」と思っておられた土地に、買い手が付く場面を何度も見てきたからです。隣地の方が駐車場や家庭菜園のために欲しがっていた、事業者が資材置き場として関心を示した、近隣の方が自宅の庭を広げたいと考えていた——動機は、都市部の売買とはまったく違うところにあります。
とくに隣地の方への売却は、境界の話し合いがそのまま進めやすく、引渡しもスムーズになりやすいという利点があります。価格が市場相場に届かなくても、解体費や負担金を負担して手放す場合と比べれば、手元に残る金額で見て有利になることもある。数字を並べて比べてみないと、どちらが負担の少ない道かは分かりません。
私たちがお手伝いできるのは、この比較の部分です。申請の可否や要件の細かな判断は法務局と司法書士の領域、税額の判断は税理士、相続人どうしの紛争は弁護士の領域になります。一方で「この土地に値が付くのか」「売るのと国に返すので、どちらが負担が少ないのか」を並べて見える形にするのは、不動産会社の役割だと考えています。遠方の土地であっても、現地の不動産会社と連携して相場感を確かめることはできます。
大阪市西区にお住まいの方から、実際にいただくご相談
西区は分譲マンションにお住まいの方が多く、ご自宅は都心部、相続した土地は親御さんの故郷という組み合わせが目立ちます。靭本町・京町堀では、ご自宅の資産価値が安定しているぶん、遠方の土地だけが宙に浮いたまま何年も動いていない、というご相談をよくお受けします。固定資産税の通知が毎年届くたびに気になりながら、現地が遠くて手を付けられない。まず登記の名義と公図を確認するところから始めると、話が具体的になります。
南堀江・新町は共働きのご家庭や単身の方が多く、現地に何度も足を運ぶ時間を取りにくいという事情があります。この場合は、現地エリアの不動産会社に査定と現況確認を依頼し、その結果を持って国庫帰属と比べるという順番が現実的です。阿波座ではご兄弟で共有になっている土地のご相談が比較的多く、方針を一本化する話し合いのほうが先になることもあります。共有名義は国庫帰属でも売却でも全員の足並みが要る点は同じですから、早めに集まっておく価値があります。
私たちは、無理に売却をおすすめすることはしません。数字を並べたうえで「このケースは国に返すほうが負担が軽そうです」とお伝えしたこともあります。お客さまにとってどちらが得かを一緒に確かめる。それが、地域で長く仕事を続けるための基本だと思っています。
相続した不動産の売却について、さらに詳しく
公式サイトに相続の専門ページがあります。相続登記から売却までの流れ、名義が複数人にまたがる場合の進め方、空き家の特例が使えるかどうかの判断について整理しています。
株式会社クレアクロス 公式サイト
よくあるご質問
Q. 古い家が建ったままでも、申請だけはできますか。
建物がある土地は却下の対象とされており、申請しても審査に進みません。解体して更地にすることが前提になります。ただ、解体費をかける前に「更地にしたらいくらで売れそうか」を確かめておくと、解体費を売却代金で回収できる可能性も見えてきます。順番を逆にしないことをおすすめします。
Q. 負担金の20万円さえ払えば、どんな土地でも引き取ってもらえますか。
20万円は原則の額で、市街化区域内の宅地や一部の農地・森林は面積に応じて算定されるため、これより高くなる場合があります。また負担金は承認された土地について納めるものなので、崖地や地下埋設物があるなど不承認事由に当たる場合は、そもそも納付の段階に進みません。審査手数料は結果にかかわらず戻らない点にもご注意ください。
Q. 遠方の土地でも相談できますか。大阪の不動産会社に頼む意味はありますか。
土地そのものの売買は現地の不動産会社が強いのは確かです。ただ、相続した土地をどうするかという判断は、ご自宅や他の財産、ご家族の状況と切り離せません。大阪でお会いして全体を整理し、現地の会社に確認すべきことを一緒に組み立てる、という関わり方はできます。まずは手元の書類をお持ちください。
靭本町・京町堀・南堀江・新町・阿波座を中心に、相続した不動産・空き家・遠方の土地の扱いに関するご相談へワンストップで対応しています。