大阪市西区を拠点に、賃貸・売買・収益・管理まで幅広く手がける不動産のプロ。肩書きに頼らず、お客さま目線での「損をしない判断材料」をお伝えすることを大切にしています。
この記事でわかること
- 贈与で受け取った不動産を売ったとき、税金がどう計算されるか
- 相続なら使えたはずの控除が、贈与では使えなくなる仕組み
- 大阪市西区で実家をどうするか、名義を動かす前に決めておく順番
売却の税金は「売れた金額」にかかるのではない
まず前提を揃えておきます。不動産を売ったときの税金は、売却価格そのものにかかるのではなく、譲渡所得(売却価格 − 取得費 − 譲渡費用)にかかります。3,000万円で売れたから3,000万円が課税対象、という話ではありません。
ここで効いてくるのが取得費です。取得費とは、その不動産を手に入れるために実際にかかった金額のこと。買ったときの価格や購入時の諸費用が中心で、建物については減価償却相当額を差し引いて計算します。この取得費が大きければ譲渡所得は小さくなり、税金も軽くなります。逆に取得費が小さいと、手元に残る現金は同じでも、計算上の利益だけが大きく膨らみます。
贈与で受け取った不動産の落とし穴は、まさにこの取得費の扱いにあります。名義が自分に変わったのだから、そのときの評価額が取得費になるのでは――そう考えたくなりますが、税法の扱いは違います。
取得費と取得時期は、親のものをそのまま引き継ぐ
贈与で取得した不動産は、所得税法60条1項により、贈与した人(親)の取得費と取得時期をそのまま引き継ぎます。名義が変わった日が新しいスタートラインになるわけではありません。これは有利にも不利にも働きます。
売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得(所得税・住民税あわせておおむね20%)、5年以下なら短期(おおむね39%)と、税率に倍近い差が出ます。親が長く持っていた家なら、贈与を受けた翌年に売っても長期として扱われます。名義を移した日から数え直しになるわけではない、という点は安心材料です。
親御さんが数十年前に購入した家なら、取得費は当時の購入価格です。現在の相場とは大きく離れていることが多く、その差額がまるごと譲渡所得として出てきます。「もらったときは評価額2,000万円だったのに、計算上の利益が2,000万円を超えた」という事態は、ここから生まれます。
取得費を証明できない場合、売却価格の5%しか取得費に計上できない扱いがあります。3,000万円で売れたなら取得費は150万円。残る2,850万円前後が譲渡所得として計算されることになり、税負担は一気に重くなります。贈与を受けるときは、権利証だけでなく購入時の売買契約書・領収証まで一緒に預かっておいてください。
贈与税の計算に使った評価額と、売却時の取得費はまったく別の数字です。ここを取り違えたまま「たいして利益は出ないはず」と見込んでいると、申告の段階で想定が崩れます。贈与税の話と譲渡所得の話は、別々に確認するのが安全です。
相続なら使えた控除が、贈与では使えなくなる
取得費以上に効いてくるのが、控除の使えなさです。金額として請求書が届くわけではないので気づきにくいのですが、結果への影響はこちらのほうが大きくなることがあります。
マイホームを売ったときの3,000万円特別控除は、自分が居住していた家であることが要件です。親御さんが住んでいた家を贈与で受け取り、自分は住まないまま売却した場合、この控除は使えません。譲渡所得が3,000万円以下なら税金が出なかったはずの取引で、まるごと課税対象になる可能性があります。
一方、相続で取得した場合には、被相続人の居住用家屋を相続して一定期間内に売るときの特別控除(いわゆる空き家特例)や、納めた相続税の一部を取得費に加算できる取得費加算の特例といった制度があります。いずれも相続・遺贈で取得したことが前提の制度で、生前贈与で名義を移した不動産の売却には使えません。
これは以前のコラムで触れた小規模宅地等の特例とまったく同じ構図です。贈与税がゼロで済んだとしても、出口で使えたはずの控除を手放していれば、家全体として見たときに損になっていることがあります。大阪市西区のように土地の評価が高く出るエリアでは、その差は決して小さくありません。
売る予定があるなら、順番を先に決める
実務でよく見かけるのが、「とりあえず名義だけ移しておきましょう」と進んでしまっているケースです。名義は一度動かすと、簡単には戻せません。戻すにはまた贈与となり、登録免許税も不動産取得税もかかります。
将来的に売る可能性が高い不動産なら、選択肢は名義を先に移すことだけではありません。親御さんが元気なうちに親名義のまま売却して現金を渡す、相続のときまで動かさない、といった順番も比較の対象になります。親名義のまま売れば、居住の実態によっては3,000万円特別控除が使える可能性がありますし、現金であれば分け方も柔軟です。どれが有利かは、居住の実態、所有期間、取得費の資料の有無、相続財産全体の規模によって変わります。
私がご相談をお受けするときは、まず「この不動産は最終的に売るのか、住み続けるのか、貸すのか」を先に伺います。そこが決まらないまま名義を動かすと、後から順番を戻せないからです。特に持分を分散させすぎると、売るときに関係者全員の合意が必要になり、話がまとまるまでに年単位の時間がかかることもあります。
西区の街ごとの性格も、判断の材料になります。靭本町・京町堀は事務所需要と住宅需要が重なり、築年数を重ねても比較的値が落ちにくいエリアです。売却を前提にするなら、慌てて名義を動かす必要性は高くありません。南堀江・新町は小規模なマンションが多く、単身から二人暮らしの実需が中心。買い手の動きが早いぶん、売る時期を選びやすい地域です。阿波座は交通利便性のわりに価格がこなれており、買主層の幅が広いのが特徴で、築年数のある戸建てでも土地の需要で動くことがあります。大阪市内では、古い戸建てでも想定よりまとまった金額になることがあり、金額が大きくなるほど、出口で使える控除の有無が結果を左右します。
税額の計算や特例の適用判断は税理士の領域です。登記は司法書士、遺産分割でもめている場合は弁護士。私たち不動産会社の役割は、その前提となる「この不動産は今いくらで、どのくらいの期間で売れる見込みがあるのか」をお伝えすることだと考えています。名義をどうするか迷っている段階、つまり何も動かしていない段階でご相談いただくのが、結果としていちばん損をしない進め方です。
名義を動かす前に、家族で確認しておく3つのこと
難しい制度の話が続きましたが、ご家族で先に手をつけられることは、そう多くありません。次の3つを揃えておくだけで、税理士への相談も、私たちへの査定依頼も、精度がまったく変わります。
ひとつめは、購入時の売買契約書と領収証を探しておくことです。概算取得費5%で計算せざるを得ない状況を避けられるかどうかは、この一点にかかっています。ご実家の権利証と同じ場所、あるいは古い書類箱に眠っていることが多いので、親御さんがお元気なうちに一緒に確認しておいてください。
ふたつめは、売る可能性があるかを家族で話し合っておくことです。「誰も住まないと思う」で構いません。方向性が言語化されているだけで、選べる順番が見えてきます。
みっつめは、実行の前に税理士へ相談すること。その際、贈与・相続・親名義での売却という3つを並べて相談するのがおすすめです。「贈与するとしたら贈与税はいくらか」だけを聞くと、比較の視点が抜け落ちてしまいます。
相続登記から売却までの流れ、共有名義の場合の進め方を公式サイトで解説しています。
よくあるご質問
Q. 贈与でもらった家の取得費は、もらったときの評価額になりますか?
いいえ。贈与で取得した不動産は、所得税法60条1項により贈与した人の取得費と取得時期を引き継ぎます。贈与税の計算に使った評価額とは別の数字ですので、混同しないようご注意ください。実際の計算は税理士へご確認ください。
Q. 購入時の売買契約書が見つからない場合はどうなりますか?
取得費を証明できない場合、売却価格の5%を概算取得費とする扱いがあり、譲渡所得が実際より大きく計算される可能性があります。通帳の記録や当時の住宅ローン関係書類、購入時の仲介会社の資料などが手がかりになることもありますので、まずは探せる範囲で探してみてください。
Q. 自分が住まない実家を贈与で受け取った場合、3,000万円控除は使えますか?
居住用財産の3,000万円特別控除は、自分が住んでいた家であることが要件です。住まないまま売却する場合は使えません。また相続で取得した場合に使える空き家特例や取得費加算の特例も、贈与で取得した不動産は対象外です。適用可否の判断は税理士へご相談ください。
靭本町・新町・南堀江・京町堀・阿波座を中心に、相続不動産の生前贈与・売却・資産活用までワンストップでサポートしています。