大阪市西区を拠点に、賃貸・売買・収益・管理の仲介に携わってきました。相続した不動産の売却では、税理士・司法書士の先生と連携し、相続税の申告期限から逆算した売却日程づくりをお手伝いしています。
この記事でわかること
- 自宅の土地の評価が330平方メートルまで8割下がる小規模宅地等の特例のしくみ
- 相続税の申告期限(10か月)より前に引き渡すと、特例が使えなくなる場合
- 配偶者・同居親族・家なき子で、居住と保有の継続要件がどう変わるか
- 空き家の3,000万円特別控除と併用するための、売却スケジュールの組み方
実家の土地が8割引きで評価されるしくみ
亡くなった方が住んでいた自宅の土地は、一定の要件を満たすと、330平方メートルまでの部分について相続税の評価額を80パーセント減らせます(租税特別措置法69条の4)。評価額5,000万円の土地なら1,000万円として計算できるため、相続税がかかるかどうかの分かれ目になるほど大きく効きます。
大阪市西区は土地の評価が高くなりやすいエリアです。靭本町や京町堀のように、面積がさほど広くなくても評価額がまとまった金額になる土地は珍しくありません。だからこそ、この特例を使えるかどうかで申告の姿が変わってきます。
ただし、この制度は土地そのものに付いてくるものではありません。誰がその土地を相続し、その後どうするかで、使えるかどうかが決まります。売却の予定を先に固めてしまうと、要件のほうを後から崩してしまうことがあるのです。
売る日を決める前に、申告期限の10か月を押さえる
相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月です。同居していた親族や家なき子が相続する場合、この期限より前に売却して引き渡してしまうと、保有を続けるという要件を満たさなくなり、特例が使えなくなることがあります。
ここで見落とされやすいのが、売買契約の日と引渡しの日は別だという点です。査定、片付け、境界の確認、買主探しといった売却の準備は、期限の前に進めても構いません。要件との関係で気をつけるのは、所有権が移る引渡しの日です。
以前、お父さまのご自宅を相続された別居のご長男から「買い手がいるなら早く売りたい」とご相談をいただきました。税理士の先生に確認していただいたところ、家なき子として特例の対象になり得るとのことでした。そこで査定と片付け、境界の確認までは先に進め、売買契約と引渡しは申告期限の後に設定しました。相続した空き家を売るときの3,000万円特別控除は、要件を満たせば小規模宅地等の特例と併用できるため、両方を活かせる順番で進めることができました。
知った日の翌日から10か月です。まず暦の上に期限を書き込み、そこから内見の時期、契約、引渡しを逆算します。順番が逆になると、あとから動かせません。
配偶者か、同居していた親族か、別居の子か。相続人によって居住と保有の継続要件が変わるため、分け方の話し合いと同時に決めておきたいところです。
引渡し日は買主の住宅ローンの進み方や入居希望時期で動きます。期限の後に設定できる見込みがあるかを、売り出す前に確認しておきます。
空き家の3,000万円特別控除や取得費加算など、売却側の特例と要件がぶつからないかを、税理士の先生と一覧にして見比べます。
誰が相続するかで、売れる時期が変わります
配偶者が相続する場合、保有や居住を続けることは要件になりません。配偶者の税額軽減と合わせて考えられる場面も多く、売却時期の自由度はいちばん高くなります。四十九日のあとに売り出すという段取りでも、特例との関係では問題になりにくい形です。
同居していた親族が相続する場合は、申告期限まで住み続け、かつ保有し続けることが必要です。「引っ越し先が決まったので先に出てしまった」という段取りが、そのまま要件に触れてしまうことがあります。住み替えを考えている方ほど、期限と引渡し日の確認が先になります。
別居の子が相続する、いわゆる家なき子の場合は、配偶者や同居の相続人がいないこと、相続開始前3年以内に自分や配偶者などの持ち家に住んでいないことなどが前提になり、そのうえで申告期限まで保有し続けることが必要です。要件が多いぶん、売却の日程が要件を崩していないかという確認がいちばん要ります。
なお、亡くなった方が老人ホームに入っていた場合でも、要介護認定などを受けての入所で、自宅を貸していないなどの要件を満たせば対象になり得ます。長く空き家になっていたから対象外だと早合点して、確認せずに売り急いでしまうのは惜しいところです。
分け方が決まらないとき、税額がゼロのときの手続き
特例を使った結果として相続税がゼロになる場合でも、申告書の提出は必要です。「かからないなら何もしなくていい」と考えて期限を過ぎてしまうと、特例そのものが使えなくなります。ここは順番を取り違えやすいところで、ご相談の場でもよくお話ししています。
また、申告期限までに遺産分割がまとまっていない土地には、原則として適用できません。ご兄弟で話し合いがまとまらないまま期限が近づいてしまうことは、実際によくあります。
その場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、3年以内に分割が決まった時点で、更正の請求により適用を受けられます。いったん特例なしで申告し、あとから取り戻す形です。話し合いが長引きそうなときほど、この書類を出しておく価値があります。
売却のご相談を受ける立場から見ると、分け方が決まらない土地は売ることもできません。売り出しの準備と分割協議を並行させ、まとまった時点ですぐ動ける状態にしておくのが現実的な進め方だと考えています。
大阪市西区で実家を相続したときの売却段取り
西区は靭本町・京町堀・南堀江・新町・阿波座と、エリアによって買主の層が変わります。南堀江や新町は住み替えの実需が中心で、阿波座や立売堀では投資としての検討も入ります。引渡し時期を後ろに置ける買主と出会えるかは、価格だけでなくこの層の違いにも左右されます。
戸建てやその敷地では、境界の確認に時間がかかることがあります。確定測量は隣地の方の立会いが必要で、1か月から2か月を見込むことも珍しくありません。期限の後に引き渡す段取りを選ぶにしても、準備を早く始めておく理由はここにあります。
片付けと残置物の扱いも日程に効きます。家財が残ったままでは内見の反応が鈍く、売り出し期間が延びがちです。申告期限の前にできる作業として、片付けはいちばん先に手をつけておきたいところです。
最後に役割の整理です。特例の適用可否と税額を判断するのは税理士の先生、登記は司法書士の先生です。私たちがお渡しできるのは、いまの価格帯と、いつまでに売れそうかという日程の見通しです。その数字を先生方に共有していただくことで、申告期限に合った段取りが組めるようになります。
よくあるご質問
Q. 申告期限の前に売買契約を結んでしまいました。特例は使えませんか。
契約した日だけで決まるわけではありません。保有の継続という要件に関わるのは、原則として所有権が移る引渡しの日です。引渡し日を期限の後ろに動かせないか、買主と調整できる場合もあります。まずは契約書の引渡し日と期限の日付を並べて、税理士の先生にご確認ください。
Q. 相続税がかからない見込みなら、申告しないまま売ってよいですか。
特例を使った結果として税額がゼロになる場合は、申告書の提出が必要です。提出がないと特例が使えず、結果として税額が出てしまうことがあります。売却の時期を考える前に、申告が必要かどうかを確認しておくと安心です。
Q. 兄弟で分け方が決まらず、期限に間に合いそうにありません。
「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、3年以内に分割が決まった時点で、更正の請求により適用を受けられる可能性があります。分け方が決まらない土地は売却もできませんので、協議と売却準備を並行して進める形をおすすめしています。
靭本町・京町堀・南堀江・新町・阿波座を中心にご相談をお受けしています。売却側の特例は空き家の3000万円特別控除、次の世代までを見た分け方は二次相続で損しない分け方、売って現金で分ける方法は換価分割の進め方で整理しています。なお特例の適用可否は個別の事情で異なります。最終的な判断は税理士の先生にご確認ください。
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