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おしどり贈与の判断材料 | 大阪市西区の夫婦間贈与【共有の出口・税額軽減・遺言】

2026.10.12(Mon)

相続・生前贈与BLOG

おしどり贈与の判断材料 | 大阪市西区の夫婦間贈与【共有の出口・税額軽減・遺言】

執筆者:重村裕一(宅地建物取引士/株式会社クレアクロス 代表取締役)
大阪市西区を拠点に、賃貸・売買・収益・管理までを一貫して取り扱っています。ご夫婦そろってのご相談では「妻に家を残したい」というお気持ちをよくうかがいます。制度の計算や申告は税理士、登記は司法書士の領域ですが、名義を動かしたあとに売りやすいのか、住み替えができるのかという「出口」は、不動産会社がお伝えできる部分だと考えています。

この記事でわかること

    • 贈与で使う2,110万円の控除と、相続のときに配偶者が使える税額軽減は別の制度だということ
    • 相続税がかかりそうにないご家庭では、税金面の効果が出にくい理由
  • それでも生前に名義を動かす意味がある場面(生前贈与加算の対象外・民法903条4項)
  • 自宅を共有名義にしたあと、売るときに起きること(3,000万円特別控除と判断能力の問題)
大阪市西区を中心とした相続・生前贈与・売却のご相談対応
相談対応110件超
靭本町・京町堀・南堀江・新町・阿波座を中心に、ご自宅の名義のご相談から売却・住み替えまでお手伝いしています
「結婚して20年以上たてば、夫婦の間で家を贈与しても税金がかからないと聞いたのですが」。60代のご主人から、奥さまとご一緒にこうご相談をいただきました。ご自宅は大阪市内のマンションで、名義はご主人の単独。お気持ちは「自分に何かあったとき、妻が困らないようにしておきたい」。制度そのものの説明は別の記事にまとめていますので、この記事では名義を動かしたあとに何が起きるかという側から整理します。贈与するか、遺言で残すか、今は動かさないか。その三つを並べるための材料です。
大阪市西区の自宅マンションの名義変更を夫婦で相談するイメージ

贈与で使う2,110万円と、相続のときの配偶者の税額軽減は別の制度です

はじめに、二つの制度を並べて確認します。婚姻期間20年以上の夫婦が居住用の不動産(またはその購入資金)を贈与したとき、基礎控除110万円と合わせて最大2,110万円まで贈与税がかからないのが「贈与税の配偶者控除」、いわゆるおしどり贈与です(相続税法21条の6)。同じ配偶者からは一生に一度だけで、税額がゼロでも贈与税の申告が必要になります。

一方、相続が起きたときには「配偶者の税額軽減」があります。配偶者が取得した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分相当額のいずれか多い金額までは相続税がかからない、という制度です。さらにその手前に、相続税そのものの基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があります。

ここで、よくある誤解が出てきます。「生前に贈与しておけば相続税が減る」と考えて動き出すのですが、そもそも相続税がかからない見込みのご家庭では、減らす対象がありません。大阪市西区のマンション一戸と預貯金というご家庭だと、基礎控除の範囲に収まることも少なくありません。その場合、おしどり贈与で得られる税金面の効果はほとんどなく、名義を移す費用だけが先に出ていくことになります。

名義変更の費用は、贈与税が非課税でも別にかかります。登録免許税は固定資産税評価額の2%(相続による移転なら0.4%)、不動産取得税は贈与による取得だと課税対象になります(相続による取得は非課税)。これに司法書士報酬が加わります。固定資産税評価額2,000万円分の持分を動かすなら、登録免許税だけで40万円という水準です。費用の内訳は生前贈与にかかる費用の記事で具体的に整理していますので、金額の見積もりはそちらをご覧ください。

それでも生前に名義を動かす意味があるのは、こういう場面です

では、おしどり贈与は使いどころのない制度なのか。そうではありません。税金の多寡とは別のところに、この制度の値打ちがあります。

一つめは、相続財産への足し戻しの対象外になることです。相続開始前の一定期間(令和6年以降の贈与は段階的に最長7年)に受けた贈与は、相続財産に加算して相続税を計算するのが原則ですが、配偶者控除を使った部分はこの生前贈与加算の対象外として扱われます。将来の相続税がかかる見込みのあるご家庭では、ここが効いてきます。

二つめは、遺産分割の場面です。民法903条4項により、婚姻期間20年以上の夫婦の間で居住用不動産を贈与した場合には、その贈与を遺産分割で持ち戻さない意思があったものと推定されます。つまり「先に渡してあるぶん、相続では取り分を減らす」という扱いになりにくいということです。お子さまが前のご結婚のお子さまである場合や、兄弟間で話が複雑になりそうな場合に、奥さまの住まいを守る方向に働く可能性があります。兄弟間の公平という論点は長男だけに家を贈与した場合の記事で扱っています。

三つめは、時間です。贈与も遺言も、ご本人の判断能力がはっきりしているうちにしかできません。認知症などで判断能力を失うと、贈与契約も遺言もできなくなり、ご自宅の売却には成年後見の手続きが必要になります。「いつかやろう」と置いたまま動けなくなるご家庭を、実際に何度か見てきました。

逆に、急ぐ必要がない場面もあります。相続税がかからない見込みで、ご自宅を奥さまに残す目的だけなら、遺言で指定しておく方法もあります。遺言なら費用は公正証書遺言の作成費用が中心で、不動産取得税はかかりません。冒頭のご夫婦は、この比較をしたうえで「いま急いで贈与しなくてよい」という結論に近づいていかれました。

見るところ 生前に贈与する 遺言で残す いまは動かさない
名義が移る時期 贈与のとき(翌年3月15日までに居住が条件) 相続のとき 相続のとき(分け方は未定)
いま出ていく費用 登録免許税2%・不動産取得税・司法書士報酬 遺言の作成費用 なし
相続時の税の扱い 控除を使った部分は生前贈与加算の対象外 配偶者の税額軽減が使える 配偶者の税額軽減が使える
売るときの手続き 共有者全員の同意と署名が必要になる 単独名義のまま進められる 相続人全員の合意が前提になる
3,000万円特別控除 居住する共有者それぞれが使える可能性 原則として一人分 相続後の居住状況で変わる
撤回のしやすさ 戻すには再度の贈与となり費用が重なる 書き直しができる 自由

共有名義にしたあと、売るときに何が起きるか

ここが、不動産会社としていちばんお伝えしたい部分です。おしどり贈与は自宅の全部を渡す必要はなく、持分の一部だけを贈与できます。たとえば相続税評価額3,000万円のご自宅なら、持分10分の7(評価額2,100万円)を奥さまへ、という形です。その結果、ご自宅はご夫婦の共有名義になります。

共有にすると、売却のときに有利に働く面があります。マイホームを売ったときの「居住用財産の3,000万円特別控除」は、その家に住んでいる共有者それぞれが適用を受けられる可能性があります。購入時より値上がりしている物件なら、譲渡所得から控除できる枠が二人分になるかどうかで、手残りが変わってきます。大阪市西区のマンションは、2010年代前半に購入されたお住まいが現在の相場を下回っているケースもありますので、ご自宅がどちらの状況なのかを先に確かめておくと判断しやすくなります。

一方で、共有には動きにくさがあります。売買契約も決済も、共有者全員の同意と署名・押印が必要です。ご夫婦お二人なら実務上の支障は少ないのですが、問題はその先です。どちらかが認知症などで判断能力を失うと、ご本人は契約ができません。成年後見人を選任する手続きが必要になり、しかも居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可がいります(民法859条の3)。申立てから許可まで数か月かかることもあり、「施設の入居費用のために売りたい」という時期に間に合わないことが起こります。

さらに、奥さまが先にお亡くなりになった場合には、その持分がお子さまなど相続人に移ります。ご主人とお子さまの共有になり、売却のたびに全員の合意が必要になる、という状態です。持分割合を決めるときは、評価額を2,110万円に合わせることだけでなく、その割合が将来どなたに移るのかまで見ておくことをおすすめします。配偶者居住権という別の選び方もありますが、こちらは売却の出口に独特の制約がありますので、下の関連記事をあわせてご覧ください。

名義を動かす前に、確かめておきたい四つのこと

ご相談の場で、私がいつも順番にお聞きしている四つです。これが揃うと、贈与・遺言・現状維持のどれが合うかが見えてきます。

1相続税がかかりそうかどうかを、先に概算する
基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。ご自宅の相続税評価額(土地は路線価、建物は固定資産税評価額が基礎)と預貯金・生命保険などを足して、この枠に収まるかを見ます。収まる見込みなら、税金を理由に急ぐ必要は小さくなります。正確な計算と申告は税理士の領域ですので、概算で枠を超えそうなときは早めにご相談先をお探しください。
2固定資産税評価額を取り寄せて、移転コストを数字にする
毎年春に届く固定資産税の納税通知書、または市税事務所で取得できる評価証明書で確認できます。登録免許税はこの評価額の2%、不動産取得税も評価額を基礎に計算されます。持分の一部だけを贈与する場合は、その割合に応じた金額になります。先に実額を出しておくと、「非課税だからお得」という印象だけで決めずに済みます。
3いまの売却相場と、購入時の金額を並べてみる
譲渡所得は売却代金から取得費と譲渡費用を引いて計算します。購入時の売買契約書が手元にあるかどうかで、取得費の扱いが大きく変わります。値上がりしているお住まいなら、共有にして3,000万円特別控除を二人分使える可能性が判断材料になります。値下がりしているお住まいなら、その論点は小さくなります。査定でいまの価格帯をお出しできますので、名義の話と同時に確認しておくと順番が整います。
4将来の住み替え・施設入居の予定を、時期で話しておく
「10年は住む」のか「5年以内に売るかもしれない」のかで、答えが変わります。近い将来に売る可能性があるなら、共有にしたときの同意の手間と、判断能力が問題になったときの成年後見の期間を見込んでおく必要があります。ご夫婦のどちらが先にという話は切り出しにくいものですが、ここを飛ばすと、いちばん大変な時期に手続きが重なります。
大阪市西区のマンションの固定資産税評価額と売却相場を並べて確認するイメージ

大阪市西区のマンションで、評価額と売りやすさをどう見るか

西区でこのご相談をいただくとき、私がまずお伝えするのは「評価額と売却価格は別の数字です」ということです。贈与の2,110万円は相続税評価額で判定しますが、相続税評価額は路線価や固定資産税評価額をもとに計算するため、実際に売れる価格とは差が出ます。マンションの場合は敷地の持分に路線価を当てて計算するので、建物の管理状態や住戸の人気が反映されにくく、売却相場のほうが高くなることがよくあります。「2,110万円の枠に収まるから持分はこれくらい」と決めた結果、実勢価格ではもっと大きな価値を動かしていた、ということも起こります。

エリアごとの事情も重なります。靭本町と京町堀は本町・肥後橋・阿波座が徒歩圏に入り、靭公園沿いの住環境を評価する層と、通勤重視の単身・二人世帯が混ざります。新町は西大橋・四ツ橋が近く、心斎橋まで歩けることが効きます。南堀江は四ツ橋・桜川が近く、立花通りの商業と住宅が隣り合う構成です。阿波座は中央線と千日前線が使えて乗り換えの自由度が高い反面、中央大通や阪神高速の高架に面する住戸は同じ築年数でも評価が分かれます。どのブロックのお住まいかで、売りやすさと価格の動き方が変わってきます。

それから、持分割合の決め方です。評価額の計算だけで「10分の7」と決めるのではなく、将来その持分が誰に移るのかを一緒に考えます。お子さまがいらっしゃらないご夫婦なら、奥さまの持分はご兄弟やその代襲相続人に移る可能性があります。お子さまがいらっしゃる場合でも、二次相続まで見ると結論が変わることがあります。二次相続の考え方は二次相続とはの記事で整理しています。

最後に、役割の整理です。贈与税の計算と申告は税理士、登記は司法書士、相続人のあいだで争いがあるときは弁護士の領域です。私たち不動産会社がお役に立てるのは、ご自宅のいまの価格帯と売りやすさ、共有にしたあとの実務の動きをお伝えすることです。「非課税」という言葉から入らず、なぜ今、名義を動かすのかを三つの材料で並べてから決めても、遅くはないと思います。

よくあるご質問

Q. 贈与税がゼロなら、申告はしなくてよいのでしょうか。

配偶者控除は、申告をして初めて適用を受けられる制度です。税額がゼロでも、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の申告が必要になります。戸籍謄本や登記事項証明書などの添付書類もありますので、登記の段取りと並行して税理士にご相談いただくのが安全です。

Q. 持分を贈与したあと、やはり元に戻したい場合はどうなりますか。

戻すには、あらためて逆向きの贈与をすることになります。配偶者控除は同じ配偶者からは一生に一度のため、戻した持分を再び渡すときにこの制度は使えず、登録免許税や不動産取得税も重ねて発生します。遺言と違って書き直しが効かない点が、贈与のいちばん大きな違いだと考えています。

Q. 共有名義にすると、売るときに本当に不利になりますか。

お二人ともお元気なあいだは、署名・押印の手間が増える程度です。実務で影響が大きいのは、どちらかが判断能力を失ったときや、一方がお亡くなりになってお子さまとの共有になったときです。3,000万円特別控除を二人分使える可能性という利点と、この動きにくさを並べて、売却予定の時期から逆算して決めるのがよいと思います。

大阪市西区の不動産会社に自宅の名義と売却時期を相談するイメージ
「贈与したほうがいいのか」の段階から、ご夫婦でご相談ください
ご自宅のいまの価格帯、固定資産税評価額から見た名義変更の費用、共有にしたあとの売却の段取りまで、資料をお見せしながらご説明します。税額の計算は税理士、登記は司法書士へおつなぎします。大阪市西区のマンション・戸建てはもちろん、市内全域のご相談に対応しています。
LINEで無料相談するお電話でのお問い合わせ 06-6940-7782
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靭本町・京町堀・南堀江・新町・阿波座を中心に、ご自宅の名義のご相談から売却・住み替えまでお手伝いしています。贈与で後戻りしにくい論点は生前贈与の落とし穴、贈与を受けた不動産を売るときの取得費の扱いは贈与された不動産の売却で整理しています。

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