株式会社クレアクロス代表取締役。大阪市西区靭本町を拠点に賃貸・売買・収益・管理をワンストップで扱い、一棟アパートや小ぶりな一棟マンションの購入前調査から、引渡し後の点検手配・管理の引継ぎまで数多く携わってきました。
- 消防用設備の点検と報告が、管理会社ではなく建物の関係者(所有者)の義務として法律に書かれていること
- 機器点検6か月・総合点検1年・共同住宅の報告は3年に1回という周期の意味
- 報告を怠ったときの罰則の規定と、立入検査で指摘が残ったままの物件が抱えるリスク
- エレベーター・受水槽・建築基準法12条の定期報告が、どの規模から増えるのか
- 管理委託契約書のどこを読めば「点検が委託範囲に入っているか」が分かるのか
- 購入前に取り寄せる4つの書類と、受付印・指摘事項の確認のしかた
- 大阪市西区(靭本町・新町・南堀江・京町堀・阿波座)の一棟物件で見落としやすい点
「消防署から、点検報告が出ていませんという通知が届いたのですが、これは何ですか」。一棟アパートをご購入されたオーナー様から、購入後しばらくしてこうしたご相談をいただくことがあります。利回りや融資、空室対策には熱心に取り組まれる方でも、建物の法定点検は意外と抜け落ちます。一棟の収益物件を持つことは、建物の管理責任を引き受けることでもあります。この記事では、どの点検が誰の義務で、購入前に何を見せてもらえばよいのかを、大阪市西区での実務に沿って整理します。管理会社の選び方そのものではなく、オーナー様自身が負う義務の中身と、その確認手順に絞ってお話しします。
消防設備の点検は、管理会社の仕事ではなく「関係者」の義務
アパートやマンションに付いている消火器・自動火災報知設備・誘導灯などの消防用設備等は、消防法により、建物の関係者(所有者・管理者・占有者)が定期に点検し、その結果を消防長または消防署長に報告することとされています(消防法17条の3の3)。条文の主体が「関係者」であることが要点です。管理会社に頼んでいても、義務の名宛人はオーナー様のまま動きません。
点検の周期は、機器の外観や機能を見る機器点検が6か月ごと、作動まで確認する総合点検が1年ごとです。報告の周期はこれとは別で、共同住宅のように特定防火対象物に当たらない建物は3年に1回が原則とされています。ここがずれているため、「3年に1回でよいのだから点検も3年ごと」と誤解されている例に時々出会います。点検は半年ごとに続け、報告書をまとめて3年ごとに提出する、という組み立てです。
点検を誰が行えるかも規模で変わります。一定規模以上の建物や消防長等が指定した建物では、消防設備士や消防設備点検資格者といった有資格者による点検が必要とされ、それ未満の小規模な建物では関係者自ら点検することも認められています。ただ、自動火災報知設備の感知器を全室で作動させる確認などは手間も判断も必要で、入居者の居室に入る調整も発生します。実務上は、専門業者に委託したうえでオーナー様が報告の有無だけ毎年確認する形が落ち着きやすいと感じています。
報告を怠った場合や虚偽の報告をした場合には、罰則の規定も置かれています(消防法44条)。もっとも、罰則の有無以前に、万一の火災のときに設備が働くかどうかが入居者の安全とオーナー様の責任に直結します。民法717条の土地工作物責任のように、建物の設置や保存に欠陥があった場合の損害賠償が問題になる場面もあります。保険でどこまで備えるかという論点は収益物件の保険は決済日からで整理しています。
「管理会社がやってくれていると思っていた」が起きる理由
いちばん多いのが、管理委託契約の範囲に消防点検が入っていないケースです。賃貸管理の委託契約は、入居者募集・家賃の収納・滞納督促・クレーム対応を中心に組まれていることが多く、建物設備の法定点検は別途の建物管理業務として切り分けられている場合があります。募集と収納はきちんと回っているので、点検だけが誰の手にも渡らず止まる、という形です。
確認の方法は単純で、管理委託契約書の業務範囲の条項と、別紙の業務分担表を見ます。「消防用設備等点検」「法定点検」という項目があるか、あるとして点検の手配までか報告書の提出までか、費用は管理料に含まれるのか実費請求なのか。この4点が書面で分かれば、抜けているかどうかはその場で判別できます。オーナーチェンジで物件を引き継いだときは、前オーナーの契約がそのまま承継されているのか、いったん解約されて空白になっているのかも確かめてください。
もう一つ見落としやすいのが防火管理者です。共同住宅でも収容人員が一定数以上になると防火管理者を定めて消防計画を届け出る必要があり(消防法8条)、戸数の多い一棟マンションでは該当することがあります。誰が選任されているのか、届出が現在のオーナー名義になっているのかは、所有者が変わったタイミングで一度点検しておきたいところです。管理の委託先そのものを見直す場合の手順は管理会社は変えられる?に分けて書いています。
建物の規模と設備で、点検はこれだけ増える
消防点検以外にも、建物の設備によって次のような点検・検査・報告が加わります。大阪市内の中規模マンションでは、エレベーター付き・受水槽ありという組み合わせは珍しくありません。いずれも毎年かかるランニングコストですので、購入前の収支計画に入れておく必要があります。
| 対象 | 根拠と周期 | どこから対象になるか |
|---|---|---|
| 消防用設備等 | 消防法/機器点検6か月・総合点検1年、報告は共同住宅で3年に1回 | 消火器や自動火災報知設備があれば規模を問わず該当 |
| エレベーター | 建築基準法12条/原則年1回の定期検査と報告 | 昇降機があれば該当。保守契約とは別に検査報告が必要 |
| 受水槽 | 水道法/1年以内ごとに1回の清掃と検査 | 有効容量10立方メートル超は簡易専用水道。10立方メートル以下も条例等で管理を求められる |
| 建物本体・建築設備 | 建築基準法12条/定期報告(周期は区分により異なる) | 共同住宅が対象かは規模と特定行政庁の指定次第。大阪市の指定内容を確認 |
| 防火管理者・消防計画 | 消防法8条/選任と届出 | 収容人員が一定数以上の共同住宅。所有者変更時は届出名義も確認 |
この表で特に注意していただきたいのは、エレベーターの保守契約と定期検査報告は別物だという点です。毎月の保守点検に入ってもらっていても、年1回の定期検査報告が出ていなければ義務は果たせていません。受水槽も同じで、清掃だけ済んでいて登録検査機関の検査を受けていない例に出会うことがあります。一棟物件の収支を読むときは、これらの年次費用を利回りの計算に織り込んでおくと、引渡し後の手取りがぶれにくくなります。建物価格の決め方と減価償却の関係は収益物件の土地建物の按分に分けて整理しました。
購入前に取り寄せる4つの書類と、その読み方
点検業者の報告書そのものではなく、消防署への提出が済んでいることが分かる受付印のあるものを確認します。点検は実施されていたのに提出だけされていなかった、という状態が実際にあります。報告書には設備ごとの判定が並び、不良と判定された箇所には指摘が入ります。直近1回分だけでなく、できれば2回分を並べると、同じ指摘が繰り返されていないかが見えます。繰り返されている場合は、直す予定がないまま引き継がれてきたと考えて価格交渉や決済前の修理協議の材料にします。
消防署は防火対象物に立入検査を行い、不備があれば改善を求めます。指摘が出ていた場合、改善報告まで終わっているのか、途中で止まっているのかを売主様に確認します。避難経路に私物が置かれている、誘導灯が切れている、防火戸の前に物がある、といった運用面の指摘は、建物の使い方の履歴がそのまま表れる部分です。設備の不良が指摘された場合は見積額も確認し、誰の負担でいつ直すのかを売買契約の前に決めておきます。
エレベーターは定期検査報告書、受水槽は清掃記録と検査結果書を見ます。ここで確認したいのは実施済みかどうかだけでなく、次回の期限がいつ来るかです。決済の直後に期限が来る物件では、引渡しからすぐに費用と手配が発生します。保守契約の内容も、フルメンテナンス契約かPOG契約かで部品交換費の負担が変わるため、契約書の写しをもらって範囲を確かめます。契約が売主様の名義で続いている場合は、引渡し日で切り替える段取りも同時に決めておきます。
業務範囲の条項と業務分担表を突き合わせ、法定点検の手配・立会い・報告書提出・費用負担のそれぞれが誰の役割になっているかを確認します。管理会社を引き継ぐ場合でも、オーナーが変われば委託契約は巻き直しになることが多く、その際に点検の項目が落ちると空白期間が生まれます。レントロールと賃貸借契約書の突合を進めるときに、この委託契約書も一緒に並べて見ると漏れが減ります。突合の手順はレントロールの検証に書いています。
以前ご相談いただいた物件では、報告書を取り寄せたところ自動火災報知設備の一部不良が指摘されたまま改善されていませんでした。売主様と協議して決済前に修理していただき、買主様は安心して引き継ぐことができました。購入後に発覚していれば、修理費も手配の手間も新しいオーナー様の負担になっていたところです。西区は靭本町・京町堀・阿波座に事務所と住宅が混在し、新町・南堀江は単身や二人暮らし向けの住戸が中心です。前者はエレベーターや受水槽を備えた中規模の一棟が多く、後者は設備が簡素なぶん消防点検の抜けがそのまま残っていることがあり、見るべき書類の重心が少し変わります。
よくある質問(FAQ)
A. まずは現状の点検を実施し、報告までを済ませるのが出発点になります。過去にさかのぼって提出できるものではありませんので、直近の点検結果で現在の状態を明らかにし、不良があれば改善の計画を立てる流れです。所轄の消防署に状況を伝えて相談すると、提出の進め方について案内を受けられることが一般的です。放置が続くほど不良箇所も増え、まとまった修繕費が一度に必要になりがちですので、気づいた時点で動くほうが負担は軽くなる傾向があります。
A. 消防用設備等が設置されている建物であれば、規模の大小にかかわらず点検と報告の対象になります。小規模な建物で変わるのは、有資格者による点検が求められるかどうかという点です。消火器しか置いていない建物でも、消火器には点検の対象となる項目があり、設置から一定年数を経たものは耐圧性能に関する確認が必要になる場合があります。「小さいから不要」ではなく「小さいから自分でも点検できる範囲がある」と整理していただくほうが実態に近いと思います。
A. 戸数・設備の種類・点検の区分によって幅が大きく、相場としてお伝えできる数字はありません。見積もりを取るときは、機器点検と総合点検の回数が明記されているか、報告書の作成と消防署への提出まで含まれるか、不良箇所の修理が別見積になるかを確認してください。エレベーターと受水槽がある物件では、それぞれの年次費用を別立てで積むことになります。購入検討中であれば、現オーナー様が実際に支払っている金額を資料で見せてもらうのが、いちばん確かな見積もりになります。
株式会社クレアクロスは大阪市西区で賃貸・売買・収益・管理をワンストップで扱っています。管理会社そのものの選び方は投資物件の管理会社の選び方、委託先を変えるときの手順は管理会社は変えられる?、家賃の滞納が起きたときの進め方は家賃滞納への対応手順で、それぞれ詳しく整理しています。購入前の書類の見方だけのご相談も歓迎です。マイベストプロ大阪の専門家コラムでも実務の記録を公開しています。