株式会社クレアクロス 代表取締役/宅地建物取引士
大阪市西区を中心に、賃貸・売買・収益物件・管理の実務に携わっています。
- 物件状況報告書(告知書)と付帯設備表が、売主さまを守る書類である理由
- 「空欄で大丈夫」と言われたときに、引渡し後へ持ち越されるリスク
- 告知書の扱い方で売却の依頼先を見分ける、5つの場面
- 媒介契約書の「あっせん欄」の読み方と、担当者に聞く7つの質問
告知書と付帯設備表は、売主さまを守るための書類です
売買した建物が契約の内容に適合していなかった場合、売主さまは契約不適合責任を負います(民法562条以下)。買主さまから、修補や代金の減額、損害賠償、場合によっては契約の解除を求められることがあります。
個人の売主さまの場合、売買契約で「責任を負う期間は引渡しから3か月とする」「設備については責任の対象外とする」といった特約を結ぶことが一般的です。ただし、売主さまが知っていながら告げなかった事実については、こうした特約があっても責任を免れることはできません(民法572条)。
つまり、知っていることを正直に書いておくことが、結果として売主さまご自身を守ることになります。もし「書くと売れにくくなるので、空欄でいいですよ」とおっしゃる担当者がいたら、それは売主さまのためのアドバイスではありません。会社としてのリスクを売主さまに肩代わりさせている状態に近いと考えています。
「空欄で大丈夫」が、引渡し後に持ち越すもの
告知書の空欄は、買主さまには「不具合はない」という意味で読まれます。引渡し後に雨漏りやシロアリの痕跡、給排水の詰まりが出てきたとき、特約の3か月を過ぎていても、売主さまが知っていたかどうかが争点になります。知っていたと判断されれば、期間の特約は盾になりません。
このとき困るのは、売却代金の使い道が先に決まっている場合です。住み替えの頭金に充てた後、相続した現金を兄弟で分けた後に減額や解除の話が出ても、戻すのは簡単ではありません。逆に、不具合を記載したうえで価格に織り込んでおけば、買主さまも納得して購入され、引渡し後に蒸し返されることはほとんどありません。
大阪市西区では、靭本町や新町に築年数の古い長屋や木造戸建てが残り、京町堀・阿波座には昭和期のRC分譲マンションが、南堀江には店舗付住宅が点在します。古い建物ほど、過去の補修歴や近隣との申し送り事項があるのが普通です。隠すより、書いて価格に反映させるほうが、話は早く進みます。
告知書の扱い方で会社を見分ける5つの場面
| 場面 | 渡すだけの会社 | 一緒に書く会社 |
|---|---|---|
| 渡す時期 | 売買契約の直前 | 媒介契約のとき |
| 現地確認 | なし | 床下・小屋裏まで同行 |
| 不明な欄 | 空欄か「なし」 | 「不明」と理由を記載 |
| 専門調査 | 提案なし | 必要な箇所だけ提案 |
| 価格との関係 | 売り出し後に値引き | 最初から織り込む |
| 引渡し後 | 売主が説明に追われる | 書面で整理済み |
媒介契約書の「あっせん欄」を見てください
宅地建物取引業法では、既存の住宅の売却で媒介契約を結ぶ際、建物状況調査(インスペクション)を実施する者のあっせんの有無を書面に記載することになっています。また買主さまへの重要事項説明では、一定期間内に実施された調査があれば、その結果の概要を説明します。
インスペクションは義務ではありません。費用もかかりますし、非破壊・目視を中心とした調査なので、壁の内側まですべて分かるわけでもありません。それでも築年数が古い建物では、売り出す前に状態を把握しておく意味は大きいと考えています。あっせん欄に「無」とだけ書かれて説明がない場合は、なぜ無なのかを聞いてみてください。理由を説明できる会社なら「無」でも構わないと思います。
媒介契約の前後で、担当者に次のことを聞いてみてください。①告知書はいつ渡してもらえますか。②一緒に現地を見てもらえますか。③わからない欄はどう書けばよいですか。④専門業者の調査が必要な箇所はありますか。⑤インスペクションのあっせんは有か無か、その理由は何ですか。⑥設備の引渡し基準はどう決めますか。⑦記載した内容は価格にどう反映されますか。この7つに具体的に答えが返ってくるかどうかで、だいぶ見えてきます。
よくあるご質問
告知書と付帯設備表は、売主さまにとっては面倒な書類に見えるかもしれません。ただ、ここを丁寧に作ることが、引渡し後に安心して次の暮らしへ進むための準備になります。査定額や広告の量だけでなく、「この会社は書類を一緒に書いてくれるか」という視点も、ぜひ相談先選びに入れてください。